「被災地にグラウンドを!」アントラーズ小笠原満男の熱き思い (4ページ目)
ならば、あとは何とか資金を集めて、グラウンドを人工芝に変えればいいのでは? と単純に考えてしまう……が、そこには被災地であるがゆえに、難しい事情があった。小笠原が続ける。
「(被災地で)まずやるべきことは、それ(人工芝のグラウンド作り)じゃないだろう、という事情がありますよね。いまだ仮設住宅で生活している人もいるわけですから。元の生活に戻れず、苦労している方がまだたくさんいる。そうした状況にあって、いくら市民の負担になることなく資金を工面できたとしても、見え方として、人工芝のグラウンドというものに対して、市民の方々が納得していただけるのか……。『今、人工芝のグラウンドが必要?』って思われても仕方がないですから。確かにそのとおりだと思いますし、人工芝のグラウンドを作るには、まずは市民の説得、同意が必要となってきます」
それでも小笠原は、地元の子どもたちのために、天候を気にせずに使用できるグラウンドを作ってあげたい――その気持ちはずっと持ち続けている。
「震災が起きたとき、中学1年生だった子どもたちがこの春、高校を卒業します。彼らはもう2度と来ない、一番大切な成長期、それも一番体力のある学生時代を、広いグラウンドで運動やスポーツを思い切り楽しむことなく、終えていく。そのことを想像しただけで、スポーツ選手としては胸が苦しくなります。本来、元気に遊んだり、運動したりできるはずの学校のグラウンドが、仮設住宅で埋まっているところは、まだたくさんありますから。だからこそ、いつでも使える人工芝のグラウンドを、早く作ってあげたいって思うんです」
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