毎年主力が抜けても、なぜサンフレッチェは3度も優勝できたのか (4ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ドウグラスだけではない。昨季加入のGK林卓人、MF柴崎晃成、柏、今季加入の佐々木が着実にチームに適応し、また21歳コンビの浅野、MF野津田岳人らが台頭してきた。気がつけば、毎年のように主力を失いながら選手層は厚みを増していた。

 34歳のベテランにして、広島というクラブをよく知る森﨑和は「自分が(広島に)在籍してきた中で、今が一番チーム内の競争力が高い」と言い、こう続ける。

「2連覇のときは、まだレギュラーと控えとの力の差がある状態だったが、今は違う。トレーニングのほうが試合より激しいくらいで、紅白戦をやっても控えのチームが勝つこともよくある(苦笑)。試合に出られない選手でも、そうやって高いモチベーションでトレーニングに臨んでくれていたおかげで、この優勝がある」

成長著しい浅野拓磨(右)。CS2戦目でもゴールを決めて、チームの優勝に貢献した成長著しい浅野拓磨(右)。CS2戦目でもゴールを決めて、チームの優勝に貢献した 主にスーパーサブとして今季出場機会を増やし、リーグ戦8ゴールを記録した浅野は、チーム内にある高い競争力を象徴する存在だと言っていいだろう。エース佐藤を脅かすまでに成長した浅野は、今季のブレイクにも満足する様子を見せず、貪欲にこう語る。

「今は1トップで出ているが、2シャドーでも自分の特徴(スピード)は生かせると思うし、どのポジションであろうとスタメンを取らないと。今、途中出場でやっている役割を先発でも果たせるようにしたい」

 今季開幕を前に、森保一監督は選手たちに、「成長しながら結果を出そう」と話していたという。言い換えれば、成長がなければタイトルに手が届かないことを理解していたということだろう。指揮官もまた、森﨑和と同じような危機感を持っていたに違いない。

 はたして彼らは、見事に「成長しながら結果を出した」。広島は試合を重ねるごとに目に見えて強くなっていった。

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