ジュビロ磐田をJ1復帰させた「名波イズム」と「3つの約束」 (2ページ目)
名波監督はチームを任された瞬間、そのことを最も危惧していた。そのため、監督就任直後から、選手間でコミュニケーションを図るように口酸っぱく指示してきたが、短期間のうちには大きな変化は望めなかった。
そこで、再スタートとなったこの日、名波監督は改めて選手たちに"コミュニケーション"の重要性を説いた。そして、チーム内のコミュニケーションを少しでも高めるために、こんな提案をしたという。
「仲良しクラブでもいいから、みんなで食事に行くとか、もっと選手同士で一緒にいる時間を増やしたらどうだろう」
名波監督が"コミュニケーション"を重視するには理由がある。ジュビロは1990年代の後半から2000年代前半にかけて黄金期を築いたが、当時現役だった名波監督をはじめ、その頃の選手たちはよくチームメイト同士で行動をともにしていた。それが、チーム作りに大いに役立っていたと名波監督が言う。
「(選手間で)話をする機会が増えれば、お互いの性格や特徴もわかる。それが、ピッチ上におけるスムーズな連係にもつながる」
個々の絶妙なコンビネーションからなる華麗なパスサッカーで多くのファンを魅了したジュビロ。その土台にあったのは、まさに普段からの"コミュニケーション"だったのだ。
そうして新シーズンを迎えると、選手たちが徐々に連れ立って食事に行く機会が増えた。すると次第に、選手、そしてチームにも変化が表れ始めた。あるチームスタッフがこんな話をしてくれた。
「練習で声を出す選手が増えて、クラブハウス内での会話も確実に増しましたね。笑い声が絶えないし、何より以前よりも、選手も、チームも明るくなった」
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