【育将・今西和男】逸材・久保竜彦のために早婚を薦め、酒を控えさせた

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Kyodo News

『育将・今西和男』 連載第5回
門徒たちが語る師の教え 廿日市FC 久保竜彦(1)

廿日市FC入団記者会見をする元日本代表、久保竜彦。2013年、現役復帰した廿日市FC入団記者会見をする元日本代表、久保竜彦。2013年、現役復帰した

 久保竜彦は心に決めた。「俺はもう絶対にここではしゃべらんとこ」

 福岡県筑前町から出て来た18歳の少年にとって、広島は大都会だった。自分の口から出る九州の訛りが恥ずかしくて仕方がなかったのである。極度の人見知りであったから、プロ入りを意識したのは筑陽学園高校の1年先輩である久藤清一がジュビロ磐田への入団を決めてからで、漠然と自分も行きたいと思ったに過ぎなかった。3年生になると、校長室に同級生の大場啓(1996年~2006年 大塚製薬/徳島ヴォルティス)と一緒に呼ばれた。部屋の中ではサンフレッチェ広島の強化担当という人が精悍な顔つきで待っていて、いくつか質問を受けた。久保の当時の記憶では「なんか偉い人の部屋で今西さんと会ったのは覚えています。印象は...、何もないですね。怖そうな顔でした。『怖いわ、これ多分』って思ってました」

 一方、今西は筑陽の吉浦茂和監督から見てもらいたい選手が2人いるという連絡を受けて、現場に河内勝幸コーチを飛ばしていたが、サンフレッチェの予算からすれば、取れるのは1人だけと思っていた。河内の報告では久保が面白いということだった。しかし、学校で会ってみると、キャプテンでもある大場はハキハキと話すのに対し、久保はボソボソと単語を発するだけで、なかなか会話にならなかった。

「困ったのう。うちはチームとして勝とうとしとんじゃが、これでは会話にならん」

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