激論!松木安太郎と福田正博が考える「Jリーグの未来」 (4ページ目)
福田 活性化という観点からすると、松木さんの意見はわかります。同時に、Jリーグにおける"サッカーのクオリティー"という点から考えると、本当にレベルアップしているのかなと疑問に感じるときもあるんです。もちろん、Jリーグが誕生してから20年が経ち、その間に日本人選手の技術レベルというのは着実に向上して、欧州リーグで活躍する選手も増えてきました。だけど、短いスパンで振り返ると、この何年間かのJリーグのクオリティーは、上限は変動していなくて、下限が向上したことで平均値が高くなったに過ぎないと感じているんです。それを物語っているのが、J1の優勝チームの勝ち点。2010年、2011年は名古屋グランパスと柏レイソルが72点でリーグ優勝しましたが、その後連覇したサンフレッチェ広島は2012年が64点で、2013年が63点。今年2014年のガンバ大阪も63点。34試合で最大102点取れる勝ち点のうち、6割を稼げば優勝できてしまう。これは高いレベルでの優勝争いとは言えないと思うんです。
松木 たしかに、欧州リーグの優勝チームと比べると、Jリーグの優勝したチームが稼ぐ勝ち点というのは少ないね。
福田 欧州リーグの優勝争いは、レベルの高いところで2、3チームが争うことが多いですが、J1の場合、優勝争いのレベルが低い。欧州リーグでは、ガンバ大阪のように14節終了時点で16位だったクラブがどんなに連勝しても優勝できないくらい、上位陣も負けずに勝ち点を伸ばしていく。でも、Jリーグではそれが可能になる。もちろんガンバ大阪の三冠達成は、長谷川監督や選手たち、クラブ関係者に敬意を表していますし、評価もしているのですが、Jリーグ全体を考えたときに、果たして今のままでいいのかと思ってしまうんです。
松木 混戦リーグの面白さという部分もあるけれど、Jリーグは、終盤になると上位陣が息切れして団子状態になっているに過ぎないともいえるからね。
福田 2014年の最終節の試合結果が、近年のJリーグを象徴していたと思うんです。1位のガンバ大阪が引き分け、2位の浦和レッズが負けて優勝が決まったというあたりが......。優勝争いの最後の最後が、引き分けと負けでは締まりが悪過ぎるし、観ている側にとって拍子抜けだと思うんです。
松木 やっぱり国内最高峰リーグの優勝を争うわけだから、優勝争いをするチームは最後まで勝ち続けてもらいたいよね。
福田 リーグ戦の終盤は優勝争いのプレッシャーがかかるので、試合が難しくなるのは理解しているんです。ただ、そのプレッシャーを跳ね退けないことには、その先にあるACL(アジアチャンピオンズリーグ)でも通用しないわけですから。やはり日本のクラブにアジアを制覇してもらいたいし、ACLの舞台でJリーグの代表として出場したチームに優勝を争ってもらいたい。その意味でも、チーム力が均一化しているJリーグというのは、どうなのかなって。
松木 欧州の主要リーグでは、各クラブの戦力バランスが不均衡なのは当たり前で、そのうえでリーグ戦を圧倒して優勝している。そういうチームに太刀打ちしようと思うと、戦力が均衡化したJリーグを制したクラブでは厳しいだろうね。
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