現役引退の佐藤由紀彦。岡崎慎司からの意外な反応

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロ●写真

12月特集 アスリート、現役続行と引退の波間 (11)

<スパイクを脱ぐ>

 サッカー選手はその行動に踏み切るときが、いつかはやってくる。従容としてその現実を受け止められるケースは、一体どれだけあるのだろうか? 澄み渡った心で最後のときを迎えられる――。

 それは全力で戦い切った男にのみ、許される特権なのだろう。彼はその権利を得ることができた数少ない男の一人かもしれない。

 佐藤由紀彦(38)は95年に清水商から清水エスパルスに入団している。

今季をもって現役を引退した佐藤由紀彦今季をもって現役を引退した佐藤由紀彦 整った顔立ちと華麗なテクニックで「プリンス」と呼ばれたが、3シーズン在籍でリーグ戦わずか2試合出場と瀬戸際に立った。プロ4年目に(当時JFLの)モンテディオ山形に期限付き移籍し、新人王などを受賞して道を切り開いた。翌シーズンは当時J2のFC東京へ移籍、右サイドのクロッサーとして99年にナビスコカップのニューヒーロー賞を受け、J1昇格にも貢献、2001年にはJリーグ優秀選手に選ばれている。

 2003年には横浜F・マリノスへ移籍。岡田武史監督率いるチームの右サイドを担い、FW久保竜彦の得点量産を手助けした。2003、04年はリーグ連覇を達成。その後も柏レイソルでJ1昇格に貢献、ベガルタ仙台でも昇格プレイオフに進んだ。2009年に入団したV・ファーレン長崎では、J2昇格の原動力となっている。恵まれているとは言えない戦力の長崎で、率先して練習に取り組む佐藤の存在が若手の鋭気を一つにした。

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