増えたJリーガー。トライアウトの意味にも変化が (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 兼子愼一郎●写真 photo by Kaneko Shinichiro

「今年はサイドバックになったことで、出場機会が減ってしまったんです。でも、今日のような仕掛けるプレイを見せられたらアピールできたのかな、と。去年、一昨年と遡(さかのぼ)ってもらえれば記録は出しているので。ここはコンディション的にプレイできる状態です、ということを知ってもらう場所。あとは気長に連絡を待ちますよ」

 負傷の代償だろうか、この日、彼は同じカテゴリーのクラブから具体的条件を含めた契約を提示されていた。奥山は他の関係者からも声をかけられており、トライアウトで一つの成果を出したと言えるだろう。

 試合後の選手たちは、チームスーツ、チームジャージ、あるいは私服と格好は様々だ。ロッカールームから控え室に移動する際、関係者に声をかけられるのだが、そこで立ち止まる選手と素通りする選手はコントラストを描く。控え室に関係者が入り、めぼしい選手に声をかける仕組みながら、有力選手は移動する際に多くの関係者から声がかかる場合が多いのだ。

 残酷な風景だが、トライアウトが門戸を広げていることは間違いない。

 Jリーグに今年からJ3が創設されたことで、単純にJリーガーの数が多くなった。その証拠にJ1選手がいなくても、この日のトライアウトの参加選手数は昨季を上回っている。その一方でチームが増え、さらにJリーグを目指している地域クラブの関係者も増加し、トライアウトで直接交渉できるメリットは大きい。両者にとってトライアウトという媒介価値が高まった。

 トライアウトは“身近な存在”となり、ハローワーク的機能も持ち始めている。昨年に続いて東南アジアからJリーガーを志している選手が4人参加。今後はトライアウトの持つ意味合いが少しずつ変わっていくのかもしれない。

 第2回トライアウトは12月16日、名古屋の瑞穂陸上競技場でJ1の選手を中心に開催が予定されている。

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