日本サッカーを支えるのは「代表愛」より「クラブ愛」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 DFラインを中心に守備のバランスを崩さず、決定的なシュートを打たれるスペースは与えない。そして、ボールを奪った後は相手のスキをついてカウンターを仕掛ける。攻める回数は少なくても、むしろ決定機の数では浦和を上回っていたほどだ。

 浦和の1点がポゼッションで押し込むなかで得たコーナーキックからのゴールだった一方で、鹿島の1点はボールを奪ってからわずか2本のパスでゴールにつなげたカウンター。得点シーンにも両者の持ち味が色濃く反映されていた。

 また、この試合を担当した西村雄一主審についても「すばらしいレフェリングだった」と、鹿島のトニーニョ・セレーゾ監督は語る。互いに闘争心むき出しにしてボールを奪い合う激しい試合はファールも多く、ともすれば荒れた試合になりかねなかった。

 にもかかわらず、主審の冷静な対応が「両チームの選手の気持ちを平静に保たせた」(トニーニョ・セレーゾ監督)。先のワールドカップでは開幕戦のジャッジで物議を醸した西村主審だったが、彼もまた好ゲームを演出したひとりである。

 ワールドカップでの日本代表の惨敗を受け、日本サッカーを取り巻く雰囲気は沈滞傾向にある。J1は約2カ月ぶりに再開したにもかかわらず、このときを待ち焦がれていたというムードはなく、やや盛り上がりに欠けている。

 だが、よくも悪くも「日本代表は日本代表、JリーグはJリーグ」だ。「非日常のワールドカップ」の結果がどんなものであろうと、「日常のJリーグ」をいつもどおりに楽しむ姿勢があっていい。

 ワールドカップを取材していて印象的だったのは、ブラジル・サポーターのスタンスである。

 彼らがワールドカップ期間中、熱心にブラジル代表を応援していたのは確かだが、そのサッカー熱の根底にあるのはあくまでも「クラブ愛」だった。

 その証拠に、身に着けているのは黄色のユニフォームでありながら、胸にはそれぞれが応援するクラブのエンブレムがついていたり、手にしたブラジル国旗をよく見ると、中央の地球が描かれている部分がクラブのエンブレムになっていたりということがよくあった。

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