新潟躍進のカギを握るのはタイプの違う「5人のFW」 (2ページ目)

  • 大中祐二●文 text by Onaka Yuji photo by AFLO

 第15節・浦和戦の後、柳下正明監督は川又をメンバーから外した理由について、「試合の準備ができていないから」と説明。そして第16節・FC東京戦前日には、「(川又)堅碁個人は、プレイの準備はできている。しかし、チームの勝利のために......というところではできていない」と話し、2試合続けてメンバーから外した。

 柳下監督の指摘する「準備不足」の意味を理解するためには、川又をめぐる環境の変化に目を向ける必要がある。2年前、降格の危機に直面していたシーズン途中から新潟を率いる柳下監督の下、チームは昨年7位に躍進。その原動力のひとつが、川又のゴールだったのはいうまでもない。

 ACL出場圏内を目指すためには、ハイプレスからのショートカウンターを軸とした昨年の戦いをベースに、今シーズンはさらにサッカーを進化させなければならない。そのために柳下監督が着手したのが、ビルドアップとポゼッションの質を高め、チャンスを増やすことでの攻撃力アップである。

 柳下監督は、新潟が押し込む試合が増えるだろうという予測のもと、今シーズンの準備をスタートさせた。クラブも、ジュビロ磐田時代に柳下監督が指導した小林裕紀を開幕前に、さらには山本康裕も中断期間中に獲得。柳下監督がふたりのMFに期待するのは、ポゼッションしながら狭い中にもスペースを見つけ出し、局面を打開するパスを前線に供給することである。

 FWの立場からすれば、敵も味方も密集する相手ゴール前で、もうひとりのFWと連動しながら、いかにパスを受けてゴールに結び付けられるか――。それが問われている。

 そこで浮上してきたのが、大柄ながら柔らかいボールタッチでポストプレイをこなす岡本と、スペースを見つけ、その俊足を狭いエリアでも少しずつ生かせるようになってきた鈴木の新2トップだ。31歳の田中達については、フルシーズン・フル稼働を求めるのは体力的に酷(こく)な話とはいえ、やはり俊敏性と技術を駆使した狭い局面の突破が強みとなる。

 何より、ポゼッションの度合いが強まるチームにおいては、FWとはいえ、点を獲ることだけに特化することは許されない。パスワークにノッキングを起こさない足もとのうまさが求められるのである。そうなると、『狭くてもスペースを見つけること』、『自分ではなく、パサーのタイミングで動き出すこと』を柳下監督から課題として指摘され続けている川又が、現状では4番手となってしまうのだ。

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