若手成長のために。鹿島、セレーゾ監督のある試み (2ページ目)
「急にこの選手をリーダーに育てようと思っても難しい。それは選手としての成熟とともにできるようになること。だから、全員がリーダーシップを取れるようになればいいと思っている。敬意を持った言い合いは必要なことであり、選手同士で何がいいか悪いかを言えるようにならなければいけない。それができないうちは未熟なチームということだ」
そして逆転勝利に舌も滑らかなは指揮官は、こんな裏話も披露した。
「(新人の)高校生や大学生が入ってきても、彼らは何もしゃべらない。だから彼らが少しでも慣れる環境を作るため、僕は今、若手のロッカーを一緒に使って、彼らにちょっかいを出して周りとコミュニケーションを取りやすくしている」
今季も鹿島を率いるトニーニョ・セレーゾ監督 photo by Takahashi Manabu ブラジル代表をはじめ、選手としても数々の大舞台で活躍してきたトニーニョ・セレーゾ監督は、「僕が18、19歳のときにはブラジル選手権を戦っていた。プロとしてどうしなければいけないのかを身につけていた」と彼我の差を嘆きつつも、若手が力を出せる環境を作るために手を尽くしているというわけだ。
そんな親心を知ってか知らずか、若い選手たちはピッチ上でハツラツとした動きを見せている。
同点ゴールを決めた土居は、日本代表経験も豊富な横浜FMのセンターバック(中澤佑二、栗原勇蔵)と対峙しても、「リスペクトしすぎてもいけないので、思い切りやった」。また、同じ21歳のセンターバック、昌子源も「課題は多いけど、いつまでも先輩に頼っていてはダメ。自分たちが成長しなければいけない」と前向きな姿勢を見せる。台頭する若手と、これまで常勝軍団を支えてきたベテランとがうまくかみ合い、鹿島は見事なスタートダッシュに成功した。
もちろん、まだまだ盤石の戦いぶりには程遠い。若い選手が多く、1試合のなかでさえ出来不出来の波が大きい。ナビスコカップでは、リーグ戦と変わらぬメンバーで臨みながら、FC東京に1-3の完敗を喫している。
それでもトニーニョ・セレーゾ監督は、「うちはまだ若く、チーム作りをしているところ。こういうふうにうまくいかないこともある」と鷹揚に構える。そうした姿勢もまた、若手がのびのびとプレイできる要因なのだろう。
2 / 3