Jリーグ史上初の無観客試合、選手と監督が語った「決意」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 セルビア人である浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、選手としてディナモ・ザクレブ(クロアチア)に在籍していた時代、「クロアチアとセルビアは犬猿の仲だった」(ペトロビッチ監督)ため、サポーターから辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせられた自身の経験を引き、こう語る。

「私はどんな状況であっても人を愛し、リスペクトして生きていこうと思う。日本にも差別的な思いを持った人がいるのかもしれないが、その人に対しても私の姿勢は変わらない。若い人がいい方向へ向かってくれればいい」

 清水のアフシン・ゴトビ監督もまた、「誰もいないスタジアムには魂が欠けていると感じた」と言い、こう続ける。

「人種差別というのは社会の病気。差別はなくしていかなくてはならない。人と人との違いがあるから世界は美しい。無知な人がいるなら教えていこう」

 百年構想を掲げるJリーグの歴史には大きな傷が残った。それは決して消すことのできない傷である。

 だが、傷を消すことはできなくとも、両クラブの指揮官が語ったように、新たな傷を作る、あるいはこれ以上傷を広げることだけはあってはならない。

 史上初の無観客試合がもたらした衝撃の大きさが、今後のくさびになってくれれば、と思う。

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