Jリーグ史上初の無観客試合、選手と監督が語った「決意」 (2ページ目)
今回、初めての事態を目の当たりにして感じたのは、その強いインパクトこそが無観客試合の意味なのではないか、ということだ。
しんと静まり返った巨大スタジアムで、音楽が流されることはなく、選手の声だけが響き、粛々と進められていく試合。それは異常事態以外の何ものでもなかった。浦和のMF鈴木啓太は言う。
「見ている人の前でプレイしたいというのが率直な感想。(サポーターが)スタジアムに来て生で見て感じてもらうことの意味を選手も感じたと思う」
それは事件の当事者である浦和の選手だけが感じたことではない。清水のMF本田拓也も気持ちは同じだった。
「正直、やりづらかったし、誰も見ていない試合は寂しい。やっぱりサポーターの力は大きい。サポーターあっての僕たちだということをあらためて実感した。こういう経験はもうないだろうし、ないほうがいいけれど、実際に経験したことで、しみじみ感じた」
試合は1-1の引き分け。互いにチャンスをつくり合う好ゲームだった。しかし、両ゴール前で起きる際どいシーンにも一喜一憂する声はない。試合終盤、どちらにもチャンスがありながら決勝点を奪えずに終わったのは、サポーターによる最後の一押しがなかったからかもしれない。浦和のDF那須大亮が語る。
「寂しいのひと言。サポーターがいてはじめて浦和レッズなんだな、と思った。(無観客だったため)選手同士の声は通りやすかったけど、そんなことより背中を押してくれる熱量があることのほうが何十倍も大きい」
こうした感覚こそが、無観客試合という処分を科されることの意味なのだろう。
それは選手ばかりではない。クラブスタッフ、Jリーグ関係者、取材に訪れたマスコミなど、すべての人が「誰も得する者のいない空虚な試合」を目にし、思慮を欠いた愚かな行為がいかに重大事を引き起こすかを実感した。
金銭的な罰を受けても、一時的に反省こそすれ、すぐに傷みは消えてしまうかもしれない。だが、この日受けた強烈なインパクトはそうそう簡単に忘れられるものではない。だからこそ、「同じことを二度と繰り返してはいけない」(那須)と、心に強く誓うことができるのだ。
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