負けて余裕の浦和は、本当に昨年と違うのか? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 得点も多いが、失点も多い。そんな出入りの激しいサッカーが昨季の浦和の特徴だったとすれば、今季の浦和はどっしりと腰を落ち着けて戦えるようになっている。つまり、しっかりとリスク管理をして無駄な失点をなくしながら、反撃に転ずることができているというわけだ。

 確かに痛い敗戦ではあったが、長い目で見れば、なるほど1シーズンを安定して戦うためのベースができつつあるといえる。指揮官は「負けはしたが、ポジティブなものが見えた」と言い、森脇もまた、「内容的に悲観する必要はない」と話す。

 とはいえ、それほど悠長なことは言っていられないという現実もまた、浦和にはある。

 06年に初めてJ1を制した浦和は、翌07年にはJリーグ勢として初めてAFCチャンピオズンリーグ(ACL)を制覇。だが、栄華を極めたのも束の間、その後の監督人事をはじめとする強化策で迷走し、ACLの王座獲得以降、あらゆるタイトルから見放されている。

 この日ピッチに立った浦和の先発メンバー11人のうち、実に8人が他クラブから移籍してきた"外様"の選手(西川周作、永田充、槙野智章、森脇良太、阿部勇樹、柏木陽介、梅崎司、興梠慎三)。しかも、うち4人はサンフレッチェ広島出身者だ(西川、槙野、森脇、柏木)。ペトロヴィッチ監督も含めれば、広島色はさらに強さを増す。育成組織出身の若手を育てるという方針から、大きく舵を切った結果である。

 世界的に見てもビッグクラブたるもの、そうした"手っ取り早い"強化策自体はごく当たり前のものだ。浦和がビッグクラブかどうかはさておき、J随一の人気と予算を誇るクラブであれば、別に驚くことはない。

 ただし、そこに納得性を持たせるには、やはり勝たなければならない。毎年のように選手を引き抜かれている広島は、昨シーズンも優勝してJ1連覇を果たしており、選手を引き抜いている浦和が広島の後塵を拝してばかりとなると話は違ってくる。

 開幕2試合目のホーム開幕戦にして、早くもゴール裏のサポーターからブーイングが浴びせられたのも、そのあたりと無関係ではあるまい。J屈指の人気クラブゆえ、監督や選手にかかるプレッシャーは相当なものだろう。

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