今季最初のタイトルを手にした広島の「新たなスタイル」とは? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷、佐野美樹●撮影 photo by Fujita Masato,Sano Miki

 今年元日、広島が2点をリードされた状況で、森保監督はエースストライカーの佐藤とプレイメイカーの高萩洋次郎に代え、野津田と浅野をふたり同時に投入した。それはかなり大胆な決断だった。

左から2点目を決めた浅野拓磨、石原直樹、1点目を決めた野津田岳人左から2点目を決めた浅野拓磨、石原直樹、1点目を決めた野津田岳人 しかし、「元日はふたりとも全然ダメだった」と森保監督。だからこそ、指揮官は試合後の控室で彼らに自覚を促すべく叱咤したのである。

 あれから2カ月足らず。舞台は奇しくも同じ国立、相手も同じ横浜FM。ふたりは見事に、監督が与えてくれたチャンスに応えてみせた。森保監督が続ける。

「今日はすばらしいプレイでレギュラー争いに加われるだけのパフォーマンスを見せてくれた。元日の悔しさをバネに伸びていることはうれしい」

 キャプテンである青山もまた、「(成長するための)いいレールに乗っているので、ふたりの活躍に驚きはないし、彼らも自信があったと思う。1年通して活躍できるようにサポートしていくし、自信を持ってやってもらいたい」と、若手の台頭に感じる手応えを隠そうとはしない。

 とはいえ、横浜FMの樋口靖洋監督に「残念だが、スコア通りの内容だった」と完敗を認めさせた広島の勝因は、19歳コンビだけにあるのではない。樋口監督が語る。

「昨季に比べ、広島は全体が前で守備をしていた。新しい今季のスタイルにうちが戸惑った」

 これまでの広島は現代サッカーのトレンドに比して、"受けて守る"ことが多かった。チーム全体が下がって守備陣形を整え、相手の攻撃を待ち受ける形である。

 森保監督はキャンプ中から、「具体的に(DFラインを)何m上げるということは伝えていない」と言いつつも、「DFラインが下がりすぎないように。守備が守備だけで終わることなく、いい守備からいい攻撃につなげてチャンスを作る」ことを、チームコンセプトとして掲げていた。今季初の公式戦で、「トレーニングしてきたことが内容として発揮でき、結果につながった」というわけだ。

 青山曰く、「昨季は無失点の試合も多かったが、その分、得点も減っていたので、キャンプからしっかり準備してきた」という広島の守備は、高い位置から積極的にプレスをかける"攻撃的ディフェンス"へと、そのスタイルを変えていた。

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