ACLまで勝ち点5。アジアトップレベルを目指す新潟の本気度 (2ページ目)

  • 大中祐二●文 text by Onaka Yuji photo by AFLO

 今シーズンの目標として、柳下監督は「ACL出場圏内」を明言する。昨シーズンは、その前年の最終節で神戸とG大阪を抜いて大逆転でのJ1残留だったこともあり、「ひとつでも上の順位を目指す」ことが目標だったわけだから、まさに大転換だ。

 昨シーズンの結果と内容が、当然ACL出場圏内を目指す根拠となっている。チームが一貫して目指すのは、ボールを奪うために自分たちからアクションを起こし、素早く攻めるサッカー。いわゆる、ハイプレスからのショートカウンターの志向性が極めて強い。

 相手が攻めてくるのを待ち構えてはね返す、守備のサッカーはしたくない。そんな柳下監督の性分が、いわば原点である。そのスタイルは、もともと新潟の選手たちが持っていた豊富な運動量、やるべきことを忠実に遂行し続けようとする勤勉性といった特徴と、相性抜群。加えて昨シーズンは、J2岡山への期限付き移籍から戻ってきたFW川又堅碁が、いきなり23ゴールを挙げて得点ランキング2位となる大ブレイク。さまざまな要素があいまって、シーズン後半、新潟が目指すサッカーは一気に実を結んだ。

 まもなく開幕する2014年シーズン。ACL出場圏内に到達するため、昨年のスタイルに新しい要素を付け加えようという発想は、柳下監督にはない。昨年のサッカーを、より速く、より強く、より正確にブラッシュアップしていく。「洗練」が今年のテーマだ。

 それが可能となるのも、今年のチーム編成が首尾よく進んだからだろう。オフに何人も主力選手が移籍し、イチからチームを作り直さなければならないのが例年の新潟だが、今年の主力の流出はGK東口順昭(ガンバ大阪)と、MF三門雄大(横浜F・マリノス)のふたりに抑えることができた。チームの骨格が維持され、目指すスタイルがすでに浸透した状態で新シーズンをスタートできることは、新潟にとって極めてまれだ。

 高知キャンプに入って、ボランチの新戦力である小林裕紀(ジュビロ磐田より加入)の調整にやや遅れが見られたものの、柳下監督は昨年のレギュラーCBである舞行龍ジェームズをボランチに上げ、U-22韓国代表でもある新加入のソン・ジュフンと大井健太郎でCBコンビを組ませる新布陣をテストした。期限付き移籍から2年半ぶりに復帰した大野和成を含め、「4人のCBの調子がいい。できるだけ多く、試合で使うことを考えた」(柳下監督)からだ。この策は、ちょうど昨シーズン終盤、川又、田中達也、岡本英也、鈴木武蔵のFW4人がいずれも好調で、「ヒデ(岡本)と武蔵をベンチスタートにしたら、試合で4人使い切れない状況も起こってくる」と、岡本を左サイドハーフにコンバートした起用法に似ている。

 同一ポジションでのハイレベルな競争と、選手個々の調子の良さを見逃さず、柔軟なコンバートによってチーム力向上へと落とし込んでいく。人員をダブつかせることのない「柳下メソッド」が、新チームを活気づけている。舞行龍、大井、ジュフンの3人のCBがゴール前で作るトライアングルは迫力十分。しかも、3人とも足もとでのボール扱いに問題はなく、コンビネーションが磨かれていけば、『より速く、より強く、より正確に』という今年の方向性に沿ったチームの進化が見られるはずだ。

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