ガンバFW宇佐美貴史「ドイツでの悔しさは絶対に忘れない」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Getty Images

「ドイツにいたとき、結果(を出すこと)の重要性と、ゴールに対する意欲は、ほんまに大事やな、と思っていたんで、できれば(ピッチの)真ん中で勝負したいと思っていたんです。それに、サイドはボールを待つことしかできないじゃないですか。もちろん、サイドからカットインしてシュートを打つのも楽しいけど、ポゼッションでボールをうまく動かせないチームだと、サイドにはボールは回ってこないし、プレイの選択肢も、基本的に縦か中か、自分の裏に回ってきたサイドバックを使うとか、3つぐらいしかない。

 でも、トップにいると、ポストプレイをする、ワンタッチではたく、サイドに散らす、シュートを狙うとか、いろいろな選択肢がある。しかも、ボールを待つんじゃなくて、ボールが動いている中心に自分がいて、自分から(パスを)待っている選手に出したりするなど、常にボールに触れている感覚が新鮮だった。原点に戻ったというか、(チームの中心だった)中学生の頃のような感覚で、めっちゃ楽しくサッカーができていた。だから、今はもう、サイドには魅力を感じないですね」

「9番」としての新たなこだわりを持ち始めた宇佐美。実際、それを裏付けるだけの結果を残した。後半戦だけで19ゴール(18試合)を記録し、J2の得点ランキングは堂々の2位(1位=22得点。ジェフ千葉のケンペス。38試合出場)。もしフルシーズン戦っていたら、J2のシーズンゴール記録(※)をも塗り替えていたかもしれない。

※J2のシーズン最多得点は、37ゴール。2004年に川崎フロンターレのジュニーニョ(39試合出場)、2007年に東京ヴェルディのフッキ(42試合出場)が記録。

 また、そうしたゴールシーンで際立っていたのは、日本人らしからぬ落ち着きと、得点パターンの多彩さだった。

「ゴール前は、落ち着いていましたね。それは(ドイツで所属していた)バイエルンとホッフェンハイムのベンチから、いろいろなゴールシーンを見せられたからです(笑)。そういうトップレベルのスピードを目の当たりにしたので、日本に戻ってきたときに自然と落ち着きが出たのかな、と思う。

 それで、いろいろなパターンでゴールを取れたことはすごく良かった。例えば、ガイナーレ鳥取戦(第30節/8月21日)、左足のミドルシュートでゴールの隅にズバンッと決めたけど、今までにあんなシュートは決めたことなかった。そもそもミドルは練習してないですからね。でも、そういうゴールを決めて、自分でも『こういうことができるんや』っていう感覚を得たのは、新鮮だった。もちろん、それが身についたのかと言えば、そうじゃない。そういうことを『もっと練習していかなあかんねんぞ』ということやと思うんです。

 要は、そのミドルシュートをはじめ、ヘディングもそうやし、新たなパターンを1個ずつ自分のモノにしていけば、半端じゃない選手になれる。ファルカオ(コロンビア代表/ASモナコ)、スアレス(ウルグアイ代表/リバプール)、メッシ(アルゼンチン代表/バルセロナ)、カバーニ(ウルグアイ代表/パリSG)など、世界のトップレベルのFWは、相手の裏を狙うだけとか、動き出しの良さで勝負するだけじゃない。形に関係なく、どんな状況からでも点を取るじゃないですか。そういう選手が相手にとっていちばん怖い選手やと思うし、それだけの(プレイの)幅がFWの選手には必要やと思う。自分はまだそこのレベルにはいっていないけど、(幅のあるプレイが)自分にも得られる手応えを感じられたのは大きかった」

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