2013年Jリーグ、名波浩が選んだ「ベスト11」 (3ページ目)
フロンターレに移籍して、ゴールを量産した大久保嘉人。FW
大久保嘉人(川崎フロンターレ)
川又堅碁(アルビレックス新潟)
大迫勇也(鹿島アントラーズ)
26ゴールで得点王に輝いた大久保嘉人は文句なし。前線で体を張ってキープするようなタイプではなく、ボールを受けるときはボランチのポジションまで下がってきて攻撃の組み立てに参加することもある嘉人。決してセンターFWっぽくはないが、そうした緩い立ち位置でのプレイが、フロンターレのサッカーにうまくはまったように思う。空中戦ではなく、足もとやスペースへのつなぎを中心としたチームの戦い方が、嘉人自身のスタイルにもマッチしていたのだろう。あと、プレイに迷いがなかった。シュートを打てば入る、といった感覚でプレイしていて、それが今季は良いほうに出たのではないだろうか。
川又堅碁は、今季最大のサプライズとなった選手。シーズン当初はサブで出場機会は少なかったけれども、レギュラーを獲得してからはゴールを量産。嘉人に次いで、シーズン23ゴールを記録したのは大したものだ。川又の良さは、動き出しの速さ。特にコンビを組む田中達也も動き出しがいいから、彼の動きに反応して、その逆をついたり、裏に抜けたりして、いいところに顔を出している。この田中とのやり取りが、彼自身の特徴をより引き出しているように思う。前線からの守備にも迫力があって、これからがますます楽しみな存在。もう1シーズン結果を出せれば、代表も見えてくるかもしれない。
今季は日本人FWの当たり年で、最後のひとりは悩んだ。セレッソ大阪の柿谷曜一朗、サガン鳥栖の豊田陽平も素晴らしい活躍を見せたが、シュートを積極的に打っていた大迫勇也を選出(103本。大久保嘉人と並んでリーグ1位)。今季はシーズンを通して迷いのないプレイをしていた。シーズン当初、トニーニョ・セレーゾ監督のFW選手のファーストチョイスは、ダヴィだったと思う。しかし、深さを作って、守備もできて、バリエーション豊富な攻撃を組み立てられる大迫が、最終的には評価された。ボールの収まりもよく、まさにFWのオールラウンダーで、代表に呼ばれるだけの人材と言える。ゴールに対して飽くなき欲望を持っているような、貪欲なプレイが随所に見られたのも良かった。
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次点は、悩んだ末に選出できなかった、FWの柿谷と豊田。そして、MF阿部勇樹(浦和レッズ)。阿部は、名古屋グランパスの闘莉王と同様で、ひとりで勝ち点10を持っている選手。今季は終盤失速してしまったレッズだが、優勝争いできたのは、彼がいるからこそ。クラブとしては、戦力的に1枚、2枚、まだ足りないと思っているかもしれないが、来季も阿部がこれまでのどおりのパフォーマンスを発揮できれば、レッズは十分に優勝を争えるチームでいられると思う。
MVPは、惜しくも優勝を逃したが、F・マリノスの中村俊輔。それは、誰もが認めるところではないだろうか。キャプテンとしてチームを引っ張り、最近はミックスゾーンでのコメントも変わってきた。これまでは自分のプレイに対することが多かったけれども、チームのことをよく考えた発言が増えた。オフにはきちんとリフレッシュして、来季も今季と同じような活躍を期待したい。
※本文内の今季データの一部は、Jリーグ第33節終了時点のもの。
データ提供:『データスタジアム』
著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍
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