【名波浩の視点】頂点も見えた! 今季のレッズはなぜ躍進できたのか (2ページ目)

  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 そして、徐々にリズムをつかんだレッズが、前半23分に圧巻の同点ゴールを決めた。

 ペトロヴィッチ監督はそれまで、1トップの原口元気には深いところに止まっているように頻繁に指示を出していた。けれどもその瞬間は、マルシオ・リシャルデスが深い位置をキープ。そこで原口は、自分が下がっても大丈夫だと自ら判断し、タイミングよく前線から落ちてきて、槙野智章からのパスをダイレクトで柏木陽介へ。柏木もそれをダイレクトで槙野にはたいて、ボールホルダーである槙野を追い越してゴール前へと入り込み、槙野からのパスを受けてシュートを決めた。

 その一連の流れは、まさにレッズの目指すパスサッカーであり、ペトロヴィッチ監督が求める攻撃の典型的な形だったと思う。テンポとスピードを一気に変え、ボールも人も動いて、原口や柏木がダイレクトパスを意図していたように、誰もがゴールまでのイメージを共有できていた。しかもそれが、相手のマンマークのリアクション、いわゆる守備のスピードよりも速い判断で展開された。本当に素晴らしいゴールだった。

 そんなふうにレッズがスムーズな攻撃を構築できるのも、やはり阿部が加入したことが大きい。阿部が最終ラインまで下がってボールを展開することで、うまくポゼッションができ、効果的なタテパスが入るようになった。そしてこの日も、常に阿部を起点にしてレッズはリズムを生み出していた。それほど阿部の存在は絶大で、今季の働きぶりはキャリアハイではないかと思っている。レスター・シティ(イングランド2部)でのプレイはそれほど見ていないけれども、向こうでいろいろなものを吸収して、今や攻守すべてにおいてチームをリードしている感じがする。

 そういう意味では、F・マリノスとしては、マルシオ・リシャルデスや柏木を抑えるよりも、阿部をきっちりマークするべきだった。阿部からのパスコースを限定して、ドリブルでタテにボールを運ばせないような対処が必要だった。しかしそれがままならず、レッズに反撃を許してしまったのだ。

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