【日本代表】ザックジャパンはなぜサイド攻撃を重要視するのか?
マンチェスター・ユナイテッドではトップ下だが、代表では左サイドの香川真司
福田正博 フォーメーション進化論 vol.25
現代サッカーにおいて、サイド攻撃は非常に重視されている。では、なぜサイドを重要視するのか。それはサイドに時間とスペースがたくさんあるからだ。サッカーの陣形が非常にコンパクトになって、GK、CB、ボランチ、SBもほぼペナルティエリアの中で守備を固めている。とくにゴール前は固められることが多く、時間とスペースがなくなっているなか、唯一スペースと時間があるのはサイドのエリアということになる。
サイド攻撃のメリットは、ドリブルやパスを回してサイドをえぐったときに、相手DFがボールウォッチャーになることだ。つまり、DFはボールと自分がマークすべき選手を同時に見ることが難しくなり守りづらくなる。DFがボールウォッチャーになるとき、FWはマークを外す動きをして、中央、つまりゴール前で有利なポジションをとることができる。
また、相手にサイドを意識させることで守備ブロックが外に広がり、そうすると相手にとって一番危険な、攻撃側にとってはよりチャンスとなるゴール前の中央が空いてくる。DFをサイドに引っ張り出すことで、守備ブロックの人と人の間にスペースが生まれるというメリットもある。
つまり、中央をなかなか崩せないので、サイドを起点にして攻撃を組み立て、そこからいい形で崩していく。サイドをうまく使うというのは、最終的には中央をうまく使いたいということでもある。ゴールがある中央にどうやってボールを運ぶかを考えたとき、相手の守備網を広げることが必要になり、そのために、ピッチの幅68mをいっぱいに使うのは非常に重要になる。
ゴール前を固めてコンパクトに守っている相手チームの守備ブロックを広げ、DFを引っ張りだして、ドリブルや速いパス回しで混乱させる。そしてゴールを奪う。それが最大の狙いだ。
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著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。