【名波浩の視点】FC東京、タイトル獲得に必要な、最後の『ピース』
キープ力のあるルーカスを中心に、効果的な攻撃を見せているFC東京。 今季、J1復帰を果たしたFC東京が快調だ。第5節の川崎フロンターレ戦では、退場者を出しながらも、ポポヴィッチ監督が掲げる、コンパクトフィールドの中で自分たちからアクションを起こして、攻撃も守備もこなしていくサッカーを随所に披露。1-0で勝利し、4勝1敗の3位と好位置をキープした。
この試合、0-0のまま残り10分を切り、勝ち点1も考えなければいけない時間帯になったときでも、勝ち点3を微かに思い描いているのは、ひとり少ないFC東京のほうに感じた。というのも、劣勢の中、前線でルーカスと石川直宏のふたりだけでも、効果的な仕掛けを見せてチャンスをうかがっていたからだ。
結果、CKから先制ゴールを奪うと、フロンターレの反撃にも耐えた。フロンターレの攻撃が中央に集中し過ぎて、サイドから崩されなかったこともあるが、前の試合のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の北京国安戦でも終盤に踏ん張って、アウェーで勝ち点1を手にして戻ってきた。その経験が、最後の粘りにつながったのだと思う。
好調の要因は、攻撃では2列目の谷澤達也と石川直宏の活躍が光る。それぞれまったく違ったタイプで、谷澤は独特のリズムで時間を作り、石川はサイドからグググッとインサイドに入ってきて決定機を演出する。特に石川は、2009年シーズンに15得点を記録した当時のイメージに近い雰囲気がある。思い切りの良さもあり、オフサイドを恐れずに出し手とのタイミングだけで裏へと飛び出していく動きは、相手にとっても脅威だろう。
そして、何より大きいのは、ルーカスの存在。ボールをおさめることができ、敵を自分に引き寄せながら、周りの選手をうまく生かしている。彼のおかげで、谷澤や石川も持ち味を存分に発揮でき、まさにFC東京の最大のストロングポイントと言える。
そのルーカスのキープから、石川や羽生直剛ら2列目の選手が鋭い動き出しを見せるが、その速さと質は、昨季よりも間違いなく上がっている。そのうえで、長谷川アーリアジャスールもボールに絡んでいこう、という意識が高く、攻撃部分での上積みは相当に大きいと思う。
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プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍