【ワールドカップ】サッカー日本代表のブラジル戦で、スペインの戦術家が漏らした「采配への疑問」 (3ページ目)
【「戦術的には合理的な戦いをした」】
そして、エチャリは見えていた勝機について、こう明かしている。
「今大会、日本で一番得点の気配を感じさせたのは左サイドの中村敬斗だった。彼は得点感覚に優れ、自らコースを作って足を振れる。スピードに乗っても、コントロール力が落ちず、常に危険な存在だった。ブラジル戦はやや連戦の疲れが出ていて、カウンターからの選択も最善ではなかったが、ブラジルののど元に突きつけた刃として残すのもひとつの策だったのではないか。5バックの一角で右サイドの堂安律を下げたとしても、1枚は攻撃のカードが必要で......」
エチャリは口惜しそうに言った。5-4-1がブラジルに対してハマっていたからこそ、その采配の是非を問うた。後半アディショナルタイムの失点で敗れる結末は、プロだからこそ受け入れられないものだ。2009年から日本代表をスカウティングしてきた彼は、日本贔屓を隠さずに「無念だ」と漏らしながら、最後にこう総括している。
「日本が大会を通じ、戦術的には合理的な戦いをしたことは間違いない。『いい守りがいい攻めを作る』という点で、ほとんど完璧に近かった。佐野はそれを体現した選手と言える。ブラジルを苦しめたことも間違いなく、その戦いを心から称えたい。三笘薫、遠藤が不在で久保建英が欠場しても、中村、佐野のような有力選手も出てきた。それは日本サッカーの成長の証だろう」
Profile
ミケル・エチャリ
1946年生まれ。サン・セバスティアン出身のスペイン人指導者。選手としては膝のケガにより27歳で引退し、その後は指導者に転身した。レアル・ソシエダでは20年以上にわたり強化ディレクター、育成ディレクター、セカンドチーム監督などを歴任。ホセバ・エチェベリア、ハビエル・デ・ペドロ、シャビ・アロンソなど多くの選手に影響を与えた。エイバルでは監督を務め、バスク代表監督(FIFA非公認だが、バスク最高の指導者に与えられる栄誉職)も10年以上務めた。また、指導者養成学校の教授も務め、教え子にウナイ・エメリ、ミケル・アルテタ、フアン・マヌエル・リージョらがいる。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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