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サッカー日本代表はどんなスタジアムで戦うのか ワールドカップ開催国アメリカの特殊事情 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【テストができない理由】

 なぜこんな現象が起こったのか。それはアメリカという、サッカーが特別でない国に理由がある。

 FIFAが主催する大会が行なわれる場合、そのスタジアムは約2カ月間、FIFAに使用権利を渡さなければならない。つまりこの期間、ほかのイベントは行なうことができない。しかし、アメリカのスタジアムにはサッカー以外にも行なわれるイベントが多くある、アメリカンフットボールをはじめとする他の競技の試合やコンサートだ。ワールドカップで使われるスタジアムは大箱で、他のイベントのリクエストも多くある。それらをすべて断念して話を受けるには、FIFAの提示する金額は少なすぎたのだ。

 たとえば、アメリカでも最先端のスタジアムのひとつにラスベガスのアレジアント・スタジアムがある。2020年にできた屋内ドーム型で、6万人以上を収容する。しかし、ここではクラブワールドカップもワールドカップもプレーされない。オーナーは金額が見合わないと思っているし、サッカーの試合が行なわれることに何の興味もないのだ。

 スタジアムがテストされていないことは、出場するチームやジャーナリスト、観戦希望者の間に多くの疑問や懸念を抱かせている。大事な試合当日に何が起こるのかわからないのはあまりにも不安だ。

 ところで私は、ワールドカップの前に、可能な限り試合が行なわれるスタジアムを見て回るようにしている。今回もクラブワールドカップの終了後、同大会で使われていなかったワールドカップの会場を見に行った。そして問題を発見した。

 ジレット・スタジアム(マサチューセッツ州フォックスボロ)ではMLSの試合を見ることができたが、とんでもなく不便だった。試合日には臨時列車が出るが、本数は極端に少なく、また駅からスタジアムまでは6キロ近くある。真夏の炎天下、高齢者や子どもが歩いてたどり着くのはまず不可能だろう。現地のメディアもこれは問題視している。現地のサポーターは家族に車で送ってもらっていたが、これは国外から来たサポーターには使えない手だ。

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