サッカー日本代表の「最も暑かった」試合は? 来年のワールドカップは気候の差が大きく影響する (4ページ目)
【気候の差が大きいアメリカ】
1994年のアメリカW杯は、大会後半に異常気象で高温が続いた。そして、西部と東部の気候差が大きかった。なにしろ、広大な国だ。
ロサンゼルス郊外パサデナのローズボウルで行なわれたブラジル対イタリアの決勝戦は、欧州のプライムタイムでのテレビ放映に合わせるために昼の12時半開始だったこともあって、日差しが眩しくて映像で見るとかなり暑そうに見える。
しかし、確かに気温は高かったが空気が乾燥していたので、それまでずっと東部の蒸し暑さのなかで観戦していた僕は、とても爽やかに感じたものだ。
ブラジルはグループリーグからほとんどの試合を西部で戦ってきていた。スウェーデンとの準決勝も決勝と同じローズボウルだった。一方、イタリアの試合はずっと東部ボストン近郊やニューヨーク近郊で行なわれていた。イタリア系住民が多いからだ。
暑さで疲労をためたイタリアは、さらに準決勝の翌日にはニューヨークからロサンゼルスまで、時差3時間の長距離フライトを強いられた。
もともと、ニューヨークでの準決勝はロサンゼルスでの準決勝より1日前に予定されていたのだが、野球(MLB)のオールスター戦と日程が被るので1日遅らされたのだ。
結局、疲れきった状態でブラジルとの決勝に臨んだイタリアは、PK戦で敗れて準優勝に終わった。
アメリカでは来年、再びW杯が開催される。今回はカナダやメキシコとの共同開催なので、気候の差は1994年大会以上に大きくなるかもしれない。メキシコ市で試合があれば、高地対策も必要になる。
日本も8大会連続出場となり、W杯に向けた準備や対策については十分な経験と情報を持っているはずだ。そもそも、日本は暑い国なのに「暑さに弱い」というのも情けない。コンディション調整には万全を期してほしいものだ。
著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7500試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。
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