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サッカー日本代表の「最も暑かった」試合は? 来年のワールドカップは気候の差が大きく影響する (2ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【欧州でも暑さにやられた】

 さて、夏のアラビア半島の暑さは当たり前のことだ。それなりの準備もできる。

 問題は、本来それほど暑くないはずの地域が急に暑くなった場合だ。

 欧州大陸と言えば、「夏も涼しい」あるいは「暑くても湿度が低くて過ごしやすい」という印象がある。ある意味でそれは正しい。しかし、夏場でも急に寒くなることがあるかと思えば、急に暑くなることもあるのだ。

 2006年のドイツW杯などは、その典型だ。

 僕は大会直前に各国が行なう準備試合を観戦するために、開幕より10日以上早くドイツ入りした。ジーコ監督率いる日本代表も開催国ドイツと戦って2対2で引き分け、期待感は一気に高まった。

 このドイツ戦が行なわれたレバークーゼンもそうだったが、5月末のドイツは厳しい寒さだった。あまりに寒かったので、僕も到着直後にケルンのデパートで防寒服を買い込んだくらいだ。

 ところが、6月9日に大会が開幕すると気温はぐんぐんと上がった。

 日本代表は初戦で当時はオセアニア連盟所属だったオーストラリアと対戦。前半、中村俊輔のやや幸運なゴールでリードしたが、時間の経過とともに暑さのせいで選手たちの足が止まり、終盤にかけてオーストラリアの猛攻に曝される。

 オーストラリアのフース・ヒディンク監督は次々と攻撃的交代カードを切って日本を追い詰め、日本は84分に"天敵"ティム・ケーヒルのゴールで追いつかれ、逆転負けを喫してしまった。初戦を落とした日本はその後、クロアチアと引き分け、ブラジルに完敗。グループリーグ敗退となった。

 敗因はいくつもあるのだろうが、コンディショニングの失敗もそのひとつ。「暑さにやられた」とも言われた。

 中東のような、もともと暑い地域での大会だったら事前に暑熱対策もできるが、本来なら涼しいはずのドイツで急な暑さに見舞われると、やはり調整は難しくなる。

 観戦する側にとってもかなりの負担だった。

 なにしろ、アルプス山脈以北の欧州では、建物も頑丈な壁によって寒さを防ぐことを目的に造られている。夏場向けに風通しがいい日本家屋とは違うのだ。そして、貧乏なフリーランス・ジャーナリストが泊まる安ホテルには、暖房は完備していても冷房は付いていないことが多い。ドイツではフランクフルトでフラットを借りて生活していたのだが、もちろんそこにも冷房は付いていなかった。

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