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稲本潤一が衝撃を受けたジダンとの1対1 「何もさせてもらえなかった。削るヒマもないくらい」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【呆然として何もしゃべらずに帰った】

── 精神的なダメージも大きかったのでは?

「もう、どうしたらいいんやろうって。やっぱり、このまま日本にいちゃダメだなっていうのは再確認しましたし、考え方だったり、意識が変わったところもありました。もっとやらなきゃいけないっていう思いにもなりましたね」

── 試合後、フィリップ・トルシエ監督はどんな感じだったんですか。

「覚えてないなぁ。キレてはいないと思いますよ。もはや、トルシエのことなんて気にしている場合ではなく、自分がこれから何をしなければいけないのか、とにかく余裕がなかった気がします」

── チームメイトとは、何か話をしましたか。

「それもあまり記憶にはないですね。ただただ、呆然として、何もしゃべらずに帰ったと思います。次の日くらいには切り替えられましたけど、試合後は何も考えられないくらいでした」

── ワールドカップでゴールを決めた試合よりも、敗れた試合が一番印象に残っているのは意外でした。

「もちろんワールドカップもそうですし、勝ったなかでも印象に残っている試合はありますけど、一番と言われると、やっぱりあのフランス戦になりますね」

── 衝撃を受けた選手も、この試合で対戦した選手になりますか。

「そうですね。やっぱり(ジネディーヌ・)ジダンがスーパーでした。(ティエリ・)アンリとか、(ダヴィド・)トレゼゲとか、あの時のフランスにはすごい選手がたくさんいましたけど、対峙したのがジダンだったので、衝撃度でいえば、別格でした。

 本当に何もさせてもらえなかったんですよ。ボールを取れないどころか、ボールに触ることさえもできなかったですから。『どうしたらいいんやろう?』っていうことしか考えられなかったです」

── 削ってやろうと?

「いや、削るヒマもないぐらいでした。ファウルで止めたかもしれないですけど、ボールを取れたことは1回もなかったですね」

── その後に対戦したことはありますか。

「それが最後だったと思います。その前にモロッコでやったこともあって、その時もすごかったんですけど、サンドニの時はよりすごかった。やっぱりあのピッチコンディションで、しかも固定式のスパイクを履いていたのに、それであのボールコントロールとボディバランスですよ。

 もちろん慣れているんでしょうし、僕もヨーロッパに行ったらそれなりに対応できるようにはなりましたけど。ジダンだけじゃなく、フランスの選手はほぼほぼ、固定でやっていたんです。それで、どうしてあんなパフォーマンスができるのかって。もう、いろいろ衝撃でした」

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