サッカーU-20日本代表は順調か? この年代がアジアで苦戦を強いられる理由 (2ページ目)
【選手たちはまだ経験の少ない「素材」】
森保一監督率いるA代表はW杯最終予選で快進撃を続け、3月には予選突破が確定するはずだ。アジアでは無敵だ。しかし、年代別代表では日本が絶対的優位とは言えず、U-20W杯出場権を逃がしたことはこれまで何度もあった。
A代表の選手たちはアジア最高レベルの国内リーグ(Jリーグ)で揉まれ、さらに欧州クラブで経験を積んでレベルを上げる。
アジア各国のなかで日本は欧州組が圧倒的に多い。たとえば、サウジアラビアなどはほぼ全員が国内組だ。それが、日本と他国との差として表われる。
だが、U-20日本代表で海外組は道脇豊(ベフェレン)とニック・シュミット(ザンクトパウリU-19)のふたりだけ。それにスペイン育ちの髙橋もいるが、他の選手は海外経験がまだない。Jリーグ組でも、中島洋太朗(サンフレッチェ広島)のようにトップでレギュラーの座を勝ち取っている選手は少ない。まだ「素材」なのだ。
もちろん、日本は育成面で成功を収めており(そうでなければ、これほど多くの選手が欧州で活躍できるはずはない)、「素材」段階でもアジアのトップにはいる。イラン戦で見せたパス回しの巧みさは大会屈指だった。
だが、どこの国にもすばらしい個人能力を持つ選手はいる。
苦戦を強いられたシリアのアタッカーたちは、先制ゴールを決めたモハンマド・アルムスタファのように、ひとり、ふたりだけでも日本のプレスをかいくぐってゴール前までボールを運ぶ技術と、グループ戦術を持っていた。
他の国にも、腰の低いパワフルなドリブルを仕掛けてくるイラクのカラル・ジャファールとか、スピードあるドリブル突破が持ち味の中国の王鈺棟といった特徴のある選手は多く、日本にはあまりいないタイプもいる。
Jリーグや欧州リーグでの経験が豊富な選手なら、強力な相手でも止められる。だが、経験の浅い年代別代表では、個人対個人で抑えきるのはかなり厳しい。
シリア戦を見ていると、どのように相手を追い込んで、どこでボールを奪うのかといった守備面での意識の統一がなかったし、攻撃面でも相手のどこを攻めるのかという狙いが明確でなく、結局、攻守ともに選手個々のアイデア頼りだった。
どんなカテゴリーであっても、代表チームにはトレーニングの時間は限られているし、一緒に活動する機会も少ない。チーム作りが遅れるのは仕方ない部分もある。
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