サッカー日本代表、三笘薫の課題と鎌田大地をボランチ起用しなかった理由を福田正博が解説 (3ページ目)
【なぜ鎌田大地のボランチ起用はなかったのか】
オーストラリア戦では遠藤航が体調不良でベンチ外になり、遠藤の代わりは田中碧が起用され、守田英正とコンビを組んだ。両選手はもともと川崎フロンターレで一緒にプレーしていたこともあって、コンビネーションに不安はない。実際、試合でも田中は及第点のプレーを見せていた。
一部では、田中ではなく鎌田をボランチで起用すべきだったとの声もあったようだが、その意見には同意できない。なぜなら、そうした選手起用のマネジメントをすると、ほかの選手のモチベーションを低下させてしまうからだ。
もしオーストラリア戦で鎌田をボランチで先発起用した場合、田中の気持ちはどうなるかを考えることも必要だろう。遠藤と守田がいて、ふたりに何かあれば自分の出番だと準備してきたのに、違う選手が起用される。当然ながら田中にとっては面白くはないはずだ。
これがワールドカップ本大会の重要な一戦なら、なりふり構う必要はない。だが、まだアジア最終予選で、日本代表は勝ち点でグループ内のアドバンテージを握っている。今後も続いていく最終予選やワールドカップに向けて、選手たちには成長を続けてもらわなければならない。その状況下では、各ポジションの選手のモチベーションは重要なマネジメント要素なのだ。
代表チームを率いる監督の仕事でもっとも難しいのは、ベンチに置く選手たちのモチベーションをコントロールすること。代表選手というのは自チームで結果を出しているから代表まで上り詰めているわけで、当然ながら自尊心が強く、誰もがベンチに座りたくないと思っている。それでもベンチを温めることになれば、代表チームの目標達成のために献身的に振る舞う。
そうした選手たちの気持ちも考慮しながら指揮するのが、代表監督なのだ。そうした背景を理解していれば、オーストラリア戦においては鎌田のボランチ起用は現実的ではなかったとわかるのではと思う。
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