サッカー日本代表の最大値を森保監督は引き出しているか? サウジアラビアに序盤で苦戦した理由 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 というのも、後半、サウジアラビアは4-3-3から3-5-2(3-3-2-2)へと、布陣をいじってきたからだ。日本の3バックとは若干異なるが、守備的であることに変わりはない。

 マンチーニと言えば、けっして攻撃的とは言えないイタリア人らしい監督として知られる。それが前半、頑張って日本に対して、定石どおりに4-3-3で向かってきた。日本は実際、苦戦した。ところが、上田に惜しいシュートを浴びて怖くなったのか、後半、日本と似たような布陣で戦うことになった。終盤は再び前に出ようと4バックに変えているが、後半36分には小川航基に2点目を決められている。この布陣を巡るブレが日本にとっては幸いした。森保一監督を救うことになった。

「賢く、したたかな戦い方」とは森保監督の言い分だが、森保監督が史上最強と言われるこのメンバーのマックス値を最大限に引き出しているかと言えばノーだ。このサウジアラビア戦で示した出力は3割程度。相手の拙攻に救われた2-0と言うべきだろう。

 次のオーストラリア戦について問われた森保監督は「勝つ保証はどこにもない」と、相変わらず生真面目そうに兜の緒を締めていたが、日本がどの国より余裕たっぷりであることは事実。このメリットをどう活かし、強化につなげるかを考えることこそが「賢く、したたかな戦い方」ではないか。

 宮本恒靖会長をリーダーとするサッカー協会の首脳陣は、2026年北中米W杯に向け、協会として招集方法を含めた戦略を練り直す必要に迫られている。従来と同じ方法ではもったいない。無駄に全力で戦っていては、日本のマックス値は更新されない。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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