サッカー日本代表の最大値を森保監督は引き出しているか? サウジアラビアに序盤で苦戦した理由 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【日本の攻撃的な魅力はほぼ発揮されず】

"例外"が起きたのは前半14分。両者は一瞬、揃って高い位置を取ることができた。堂安のクロスを三笘がダイレクトで折り返したシーンである。それを守田が頭で落とすと鎌田が飛び込み、先制弾とした。

 しかし、その後もサウジアラビアのペースは続く。関係は4対6。日本はボール支配率で劣ることになった。1-0でリードながら、好ましくない展開を強いられた。

 日本の3-4-2-1は相手ボールに転じると5-4-1に移行するが、両シャドーの移動距離が長いため、移行が完了するまでに時間がかかる。よって、順番的にはまず5バックの態勢を固め、それからその前方に「4」が形成されることになる。前からプレスは掛かりにくいのだ。また、ボールを奪っても、今度は1トップの上田が孤立する。他の選手との距離が遠いからである。

 1トップがボール回しに絡む機会が少ない。これは森保ジャパンの構造的な問題にも見える。CFが主役ではなく脇役に見えるサッカーだ。前にボールが収まる機会が少なければボール支配率は上がらない。得点シーン以降、日本の攻撃的な魅力はほぼ発揮されなかった理由だ。リードしているからいいようなものの、見ていて面白い試合ではなくなっていた。

 危なかったのは前半42分。サウジアラビアの右SBサウド・アブドゥルハミドが放った強烈なインステップキックが日本ゴールの右上隅を捉えた瞬間だった。GK鈴木がファインセーブでこれを弾き出したが、決まっていたら2-0の勝利はなかったかもしれない。ターンニングポイントと言ってもいいプレーだった。

 日本も前半のアディショナルタイムに、上田が相手GKに体勢を崩させる惜しいシュートを放っている。これが決まっていれば試合も決まっていた。サウジアラビアのロベルト・マンチーニ監督を警戒させるには十分な一撃だったのかもしれない。

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