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ワールドカップアジア最終予選開幕 サッカー日本代表の初戦の相手・中国との長い歴史と興亡 (2ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【中国サッカーの苦しい現状】

 現地からの報道を見ると、中国は日本戦より9月10日のサウジアラビア戦を重視しているようだ。「日本相手にアウェーで勝つのは難しい。それなら、ホームのサウジアラビア戦に全力を」というのだ。

 サウジアラビア戦の試合会場は大連だ。中国は大連で合宿をしたあと、いったん日本に遠征してすぐ大連に戻ってサウジアラビアを迎え撃つ。一方、サウジアラビアは9月5日にホーム(ジッダ)でインドネシアと戦ってから、大連まで長距離移動を強いられる。たしかに、中国有利なのは間違いないだろう。

 日本やオーストラリア、サウジアラビアに伍して2位以内に入るのは難しい。だから、確実に4位以内に入って4次予選(プレーオフ)経由で出場権獲得を目指すというのが中国の戦略らしい。

 たしかに、ここ数年、中国サッカーの劣化は激しい。

 2010年代に、サッカー好きで有名な習近平国家主席の肝煎りで、中国はサッカー強化計画を立てた(目標はW杯開催とW杯優勝だった)。

 すると、独裁的権力を確立した最高指導者の意向を忖度して、地方政府や大企業はサッカーに巨額の資金を投じた。欧州や南米の有名選手多数と契約し、トップクラスの監督を引き抜き、巨大なスタジアムや練習場を建設した。何人かの外国人選手は中国国籍を取得して代表にも入った。

 しかし、思惑ははずれた。

 優れた若手はなかなか育たず、この数年の不動産バブルの崩壊によって親会社が経営危機に陥ったためクラブ経営は悪化。ACLで何度も日本のクラブの前に立ちはだかった強豪、広州恒大(広州FC)はバックにあった不動産大手「恒大集団」の破綻によって2部に陥落。各クラブで給料未払いが発生し、コロナ禍での極度な行動制限に嫌気が刺した外国人選手の多くは中国を離れていった。

 そして、いきなり巨額の資金が流入すれば、どんな組織でも必ず腐敗する。その結果、中国サッカー協会幹部や代表監督が汚職の疑いで拘束されるに至った。そして、代表チームも弱体化し、タイやベトナムにも苦戦するようになった......。

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