サッカー日本代表のワールドカップ予選を識者が展望「アジアで強くなる時代は終わった?」 (3ページ目)

アジア予選を通じて日本代表が強くなるという時代は終わった
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
8勝1分1敗

「アジアは侮れない」

 それはもはや、1980年代、90年代を戦ってきた者たちの「コンプレックス」の残滓にすぎない。アジアで戦う移動距離の長さやスタジアムの劣悪さなどは今も「難しさ」として引き継がれている。しかし、日本はアジアでは実力的に頭ひとつ抜けた。

 では、なぜ今年のアジアカップはベスト8で姿を消したのか。それは、不当な日程での戦いを余儀なくされたからだ。

 アジアカップは欧州シーズンの真っ只中で行なわれ、モチベーションの問題があったし、心身のコンディションを維持するのも困難だった。欧州や南米の選手たちはシーズン中に大陸別の大会を戦うことはない(ユーロもコパ・アメリカも6~7月の開催)。アジアカップに参戦した選手たちの士気が上がらず、足元をすくわれたのは自明の理だった。

 繰り返すが、サッカーのレベルで言えば、日本の選手たちはアジアのなかではすでに突出している。

 W杯アジア最終予選で日本はオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアと同組に入ったが、戦力差は歴然だろう。遠藤航(リバプール)、久保建英(レアル・ソシエダ)、守田英正(スポルティング)、南野拓実(モナコ)、上田綺世(フェイエノールト)など、ヨーロッパのカップ戦に参戦する有力クラブの選手が多数にのぼる。欧州各国のリーグを見渡して、これだけの日本人選手がプレーした時代は過去にない。

「10勝無敗」

 その結果でも不思議はないだろう。オーストラリア、サウジアラビア、もしくはバーレーンとのアウェーでの取りこぼしはありそうだが、それほどの戦力の違いがある。

 そこで議題となるのが、「来年6月までベストメンバーを招集すべきか?」という点だろう。数段レベルが低いアジア最終予選に、ベストメンバーを呼ぶのは損失のほうが大きい。アジアとの往復で、せっかくの舞台を前に体調を崩す可能性があるからだ。森保一監督は「石橋を叩いて渡る」タイプだけに、ベストメンバー招集にこだわるだろうが......。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る