日本代表メンバー発表に抱く違和感の数々 最大の見どころは「鎌田大地vs森保一」 (3ページ目)
【鎌田大地を外してきたという事実】
先述した復帰組5人のなかで、最も引っかかりを覚えるのが鎌田だ。森保監督はタイ戦、アジアカップ、北朝鮮戦と、鎌田の招集を避けてきた。所属クラブでスタメンを外れる機会が多かったことと、それは深い関係にあるように見えるが、森保監督の鎌田評は、それ以前からけっして高いとは言えなかった。たびたび外してきた過去がある。
その間、フランクフルトの一員としてヨーロッパリーグを制し、チャンピオンズリーグ(CL)にも出場。株を上げて今季はラツィオに移籍した。ところが監督(マウリツィオ・サッリ)との相性が悪く、出場機会は思うように伸びない。そのタイミングで森保監督は鎌田を外した。現在のUEFAリーグランキングでプレミアリーグに次ぐ2位に位置するセリエAの上位チーム。CLでもベスト16入りしたレベルの高いチームでの話であるが、森保監督は容赦なく、鎌田を除外した。
ところがサッリのクビが飛び、イゴール・トゥドールが新監督の座に就くと、鎌田に対する扱いは一変、不動のスタメン選手となった。トゥドールは「こんないいい選手がベンチを温めていた理由がわからない」と言った。
先日のインテル戦でも鎌田は先制弾を挙げるなど、マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を見せている。代表復帰は当然の結果と言えるが、筆者は復帰より、外された事実を重く見る。6年も前から、日本代表の監督として鎌田を見続けている森保監督の鎌田評は、トゥドールに近いか、サッリに近いかと言えば、後者になる。日本代表監督がトゥドールなら、アジアカップには間違いなく招集していただろう。ベスト8という不甲斐ない成績と、森保監督のサッリ的な"目"は深い関係にある。
筆者は「センタープレーヤーが務まる鎌田的な選手がいれば、日本の攻撃は円滑になった」と、アジアカップ期間中、再三、指摘したものである。
鎌田は急にヘタになったわけではない。急に上達したわけでもない。出場を左右したのはサッリ、トゥドールそれぞれの目だ。筆者が鎌田なら、定見のない森保監督を訝しげに見るだろう。代表復帰を、心の底から喜ぶことができずにいると見る。
ミャンマー戦、シリア戦。一番の見どころは鎌田対森保になる。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
フォトギャラリーを見る
3 / 3