C大阪・毎熊晟矢はキャリア4年目で日本代表入り ストライカーだった男はどうやってサイドバックで成功したのか? (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【「サイドバックの師匠」に教わったこと】

 さすがに、毎熊は戸惑いを隠せなかった。

「一度もやったことがなかったですからね。FWとして評価されて入ってきて、キャンプの2試合目の試合で、いきなりサイドバックですから。プロ1年目でそんなことがあるのかって驚きましたし、悪くとらえれば、もう戦力に見られてないのかなっていう気持ちにもなりました」

 それでも毎熊は感情を押し殺し、プロとして与えられた役割を全力でやりきった。すると、試合後にベンチに戻った毎熊は、「全然できるじゃん」と思わぬ高評価を受けることとなった。

「自分のなかでは本当に迷子になっていて(笑)。 どこにポジションを取ったらいいかわからないですし、手応えはまったくなかったです。できるじゃんって言われたのも、その時は慰めの言葉だと思っていましたから」

 さすがにこれは無理だと察した毎熊は、コーチの下に直談判に向かった。当時のコーチは現在、ヴィッセル神戸の監督を務める吉田孝行だった。

「やりたくないっていう言葉は使ってないですけど、僕はもうFWに戻れないんですかって聞きにいったんです。でも吉田さんは、お前なら絶対できる、このポジションなら代表までいけるって言ってくれたんです。

 半信半疑ではあったんですけど、このままマイナスな気持ちで続けていてもしょうがないですし、その言葉を聞いて、与えられたポジションでやってみようと吹っきれました」

 もっとも未経験者にとって、慣れないポジションでのプレーは簡単なことではなかった。

「特に守備時のポジショニングが本当に難しかったですね。ここにボールがある時はどこにポジショニングを取ったらいいとか、そんな基本的なことさえまったくわからなかったですから」

 そんな毎熊が頼りにしたのは、左サイドバックを務めていた亀川諒史(現アビスパ福岡)だった。

「僕はカメくんのことを『サイドバックの師匠』と呼んでいて、毎回、うまくいかないたびに聞きにいっていました。守備の仕方とか、本当にいろんなことを教わりましたね」

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