U-23日本代表、UAE戦先発7人入れ替えで開けたパリ五輪への道筋 連勝で見せた総合力 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【チームが一丸になりやすい采配】

「今の日本では先を見通した戦い方をすることはできない」と述べたのは森保一監督だ。東京五輪後の会見で、選手の起用法を尋ねられた際の答えである。2019年アジアカップ、2021年東京五輪、2022年カタールW杯、2024年アジアカップと、森保監督はロシアW杯当時の西野式と同じスタイルで戦っている。次回のW杯本大会ではベスト8以上を目指すと述べているが、弱者の発想で5試合以上を戦おうとしているなら、それは単なる精神論と言わざるを得ない。

 UAEは日本に対し、第1戦(韓国戦)とほぼ同じメンバーで臨んできた。この時点で3位以内(五輪出場権獲得)は難しそうなチームだと推測できた。それとは真逆のスタンスで臨んできた日本のスタメンを見て、ホッと胸をなで下ろしたものである。アギーレ、西野、森保式では先が思いやられる。そう思っていただけに、大岩剛監督の決断に拍手を送りたくなった。

 日本は内野貴史、高井幸大、西尾隆矢、藤田譲瑠チマ、松木玖生、平河悠、細谷真大に代わり、大畑歩夢、木村誠二、鈴木海音、川崎颯太、荒木遼太郎、佐藤恵允、藤尾翔太がスタメンを飾った。

 それで2-0の勝利を収めた。理想的な勝利以外の何ものでもない。この大会は中2日の戦いなので、当然といえば当然なのだが、この当然のことが日本サッカーはこれまでうまくできていなかった。

 2戦を終えて、出場していない選手はフィールドプレーヤーの中では半田陸、田中聡のわずかふたり。チーム内に大きな境界がないことが、先を目指すうえで何よりの収穫だ。チームが一丸になりやすい采配だ。

 大岩監督は第1戦の中国戦でも理想を貫いている。退場者を出し10人になりながら、後ろで守ろうとしなかった。4-4-1の体制を堅持した。これもチームが一丸になりやすい采配である。苦しくなると5バックで守る作戦より、監督のカリスマ性は高まる。チームに勢いが生じる。

 もっとも、中国戦では気になる要素もあった。

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