U-23日本代表、UAE戦先発7人入れ替えで開けたパリ五輪への道筋 連勝で見せた総合力 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【細谷の居心地がよくなった】

 1トップの細谷が4-4-1という布陣のなかで孤立していた点だ。4-3-3の1トップは、4-2-3-1の1トップより、それ以外の選手との距離が遠のく。そのため1トップにはボールを収める力が求められる。ところが細谷はポストプレーをさほど得意としない。4-3-3に落とし込んだとき、しっくりくる選手ではない。その傾向が、4-4-1になってより鮮明になっていた。

 優勝、あるいは3位以内を目指そうとすれば、実力者である細谷が布陣のなかにきれいに収まる必要がある。

 このUAE戦では、細谷は後半29分、藤尾に代わって4-3-3の1トップに座った。すると次の交替機で、中盤の川崎に代わり内野航太郎が入ってきた。布陣もそれに伴い4-4-2に変化した。細谷と内野の2トップ体制になった。後者はボールを収める能力が高い選手だ。細谷の居心地はこれグッとよくなった。最適解を見た気がした。

 問われているのは、決勝までの全6戦をコンスタントに戦うチームとしての総合力だ。一定の水準を誰がピッチに立っても保てるか、である。中国、UAEに連勝すると同時に、そちらの課題も克服できそうな見通しが立ってきた。

 右肩上がりが続く選手の質に監督采配がようやく追いついた。筆者にはそう見えた。多くの選手を使いながら中国、UAEに連勝する姿が、筆者には喜ばしい光景に見える。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る