なぜ森保監督を続投した? 田嶋幸三の答えは「確実に勝ってくれる監督がいたら、すぐにでも代える」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【W杯ベスト16の壁を越えるために必要なトライ】

 最終予選序盤の苦しみからチームを救ったのは、「1チーム2カテゴリー」で強化されてきた東京五輪世代だ。

 負けたら予選突破に赤信号がともる10月のオーストラリア戦で、カタールワールドカップ・アジア最終予選初先発の田中碧が先制点を挙げた。アウェーへ舞台を移した翌年3月のオーストラリア戦では、三笘薫の2ゴールが勝利を呼び込んだ。彼らふたりに、久保建英や板倉滉、堂安律や冨安健洋らの東京五輪世代がチームを底上げし、森保は就任当初のタスクだった世代交代を推し進めながら、カタールワールドカップ出場権を獲得したのだった。

 2022年12月開幕のカタールワールドカップでは、ドイツとスペインを撃破してラウンド16入りを果たした。グループ1位での16強入りは、2002年以来だった。

「PK負けだったラウンド16のクロアチア戦も含めて、2018年に匹敵する実績を残してくれました。続投については、技術委員会がどう考えるのかが大前提です。私自身は森保監督を代える理由が見つからなかったので、続投に疑問はありませんでした」

 ワールドカップで采配を振るった監督がワールドカップ後も引き続き采配を振るうのは、史上初めてのことだった。

 森保は自らへの支持を証明するかのように、2023年のテストマッチでドイツを再び撃破する。国際Aマッチ9連勝で2024年1月開幕のアジアカップに乗り込む。だが、待ち受けていたのはシビアな現実だった。グループステージから苦しい戦いが続き、準々決勝で大会から去ることとなった。

「アジアの国々は日本に対して死に物狂いでくる、ということをあらためて感じました。必死になってやってくる相手に勝つのは簡単じゃないという現実を突きつけられた。

 けれど、ワールドカップ予選へ向けては、必ずしも悪いことではなかったでしょう。最終ラインから組み立てて崩す、相手が引いて守っても崩すというトライは、ワールドカップベスト16の壁を越えるために必要なトライだったと思います」

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