日本代表のモヤモヤが晴れない 圧倒的ボール支配も前半枠内シュート1本の要因は (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【幅をとった攻撃陣形で中央からの攻めが増える】

 そのベトナム戦では、4-2-3-1の日本はボール保持時に4-2-4の陣形になって相手ゴールを攻略しようとしたため、中央への縦パスがほとんど使えないという現象が起きた。しかしこのインドネシア戦の日本は、遠藤をワンボランチにした4-3-3(4-1-4-1)を採用。試合開始からベトナム戦の後半に見せた5バックの前に前線3人とインサイドハーフふたりの計5人が立つことで、中央ルートのパスコースを作り出していた。

 特に右ウイングの堂安律、左ウイングの中村敬斗が、それぞれ大外のレーンに立ってしっかりと幅をとっていたのが目についた。しかも右サイドでは、堂安が内に入ってプレーする場合、必ずインサイドハーフの久保、もしくは右サイドバックの毎熊晟矢がポジションチェンジして幅をとる役割を担っていた。

 そこからは、5バックの相手に対して両サイドの幅をとって攻めるという意識がチーム内に浸透していることがうかがえた。

 両サイドで幅をとれば、相手の5バックは広がる。それにより前半から中央ルートのパスコースを確保した日本は、くさびの縦パスを5本記録したほか、DFラインのギャップを狙ったスルーパスや浮き球のパスを狙う中央攻撃が頻繁に見られた。

 その典型例は前半23分。毎熊が右サイド大外の高い位置でボールを奪うと、近くにいた堂安が回収し、内側の遠藤にパス。すかさず遠藤が斜めのくさびを上田に入れると、ダイレクトで落としたボールを前向きの久保がエリア内に進入した遠藤に預け、遠藤のリターンを久保が右足でシュートしたシーンだ。ゴールとはならなかったものの、連動性のある中央攻撃だった。

 また、中村のポストに直撃した35分のシュートシーンも、ペナルティーエリアの幅の中で繰り広げた連続攻撃から生まれたシーンだ。

【決勝トーナメントでカウンターを決められるか】

 もっとも、中央に攻撃が偏りすぎたのも事実。これだけ敵陣でボールを保持しながら、サイドからのクロスが6本しかなかったのがその証左のひとつで、中央攻撃とサイド攻撃のバランスという点においては課題を残したとも言える。前半に追加点を決められず、枠内シュートが1本しかなかったことと、無関係ではないだろう。

 後半は、前半とは異なる試合展開になった。インドネシアが自陣でブロックを敷いて守るのではなく、日本のDFラインにプレッシャーをかけてきたからだ。後半開始直後、日本はインドネシアの圧力に手を焼いた部分もあったが、しかしこのシチュエーションで強さを発揮するのが現在の森保ジャパンの特徴だ。

 51分、冨安が自陣で秀逸なダイレクトの縦パスを堂安に供給すると、鋭いカウンター攻撃を発動。その流れから、堂安が左から入れたクロスをフリーの上田がネットを揺らし、2-0とした。

 もちろん、決勝トーナメントで対戦する相手のレベルになれば、カウンターからゴールを奪うのも簡単ではないだろう。

 しかしながら、日本が先制をすれば、ビハインドを背負った相手は必ずどこかの時間帯で前に出てくる。その時こそ森保ジャパンの強みが発揮できる戦況になるのを、改めて確認できたこともこの試合で手にした好材料と言えるのかもしれない。

 翌25日の試合結果により、韓国との対戦の可能性もあったラウンド16の相手は、韓国が終了間際にマレーシアに追いつかれたため、ヨルダンに勝ったバーレーンに決まった。

 果たして、これが優勝を目指す森保ジャパンの追い風になるのかどうか。ラウンド16の戦いも、目が離せそうにない。

著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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