日本代表、アジアカップでの焦点は「選手を使い回して」優勝できるか 過去2大会はそれで失敗 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【最も攻撃的だったアギーレジャパン】

 アギーレ采配に抵抗を覚えたのはそこだけではなかった。グループリーグ初戦のパレスチナ戦、2戦目のイラク戦、3戦目のヨルダン戦、さらには準々決勝のUAE戦と、4戦連続でスタメンを、以下のメンバーでまるで入れ替えることなく臨んだことにある。

 川島永嗣、吉田麻也、森重真人、酒井高徳、長友佑都、長谷部誠、遠藤保仁、香川真司、本田圭佑、乾貴士、岡崎慎司。

 メディアは、オールスターキャストを毎度並べるこの采配を特に問題視しなかった。選手を使い回す術に優れていないと4試合目以降(決勝トーナメント)になると行き詰まる――という意見は聞かれなかった。準々決勝でUAEに1-1、延長PK戦で敗れたことと、それは密接な関係にあると見る。

 ただし一方で、サッカーの中身そのものは上々だった。その4-3-3と3-4-3の可変式は実にバランスよく機能していた。歴代の日本代表のなかで最も整ったサッカーと言えた。

 それまでの日本代表にはポジションをカバーする意識が薄かった。日本人の指導者にその概念がなかったことが最大の要因になるが、その名残はザックジャパンでさえ見え隠れした。

 ザックジャパンが2010年ブラジルW杯初戦でコートジボワールに逆転負けした理由は、まさにその概念の希薄さだった。左ウイングの香川が相手ボール時にポジションを外していたことが痛手となっていた。2015年アジアカップで左ウイングを務めた乾とポジショニングを比較すると、それは一目瞭然となる。

 たとえばイラク戦。スコアは1-0ながら、それは考えられる範囲の中で最上の1-0だった。特に後半18分、遠藤に代わって今野が投入されると、布陣は、マイボール時には3-1-3-3となり、フラット型に近かった中盤の構成はダイヤモンド型になった。1トップ(岡崎)と周囲との距離が遠く孤立しがちだった問題は解消。パスコースが多く、バランスに富んだ、文字どおりの攻撃的サッカーになった。

 しかしアギーレは大会後、解任。後任のヴァイッド・ハリルホジッチも2018年ロシアW杯の開幕を2カ月後に控えた段で解任される。そして本大会を戦った西野朗監督も大会終了後に退任する。

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