U-22日本代表に大敗したアルゼンチンの衝撃 指揮官の狼狽ぶりに重なるメッシの言葉 (3ページ目)
そのキャリアに敬意を表し、最後はメディアの拍手で送り出されたが、むしろ生来の勝利者には皮肉な光景だった。
今年3月、マスチェラーノはU-20W杯出場を逃し、一度は辞任を決意していた。急遽、本大会のアルゼンチンでの代替開催が決まり、再びチームを率いるも、ベスト16止まり。彼自身は「選手の重圧を取り払い、プレーを楽しんでもらいたい。ピッチで自由に表現できることで、良さを出せるはず」と、過剰に勝利を要求する時代に終止符を打とうとした。だが、それが勝負弱さにつながっているとすれば......。はたして、どのようなアプローチが正解なのか?
アルゼンチン人は極端に敗北を憎むが、実は向き合う術も知っていた。たとえばカタールW杯ではメッシを中心に世界王者になったが、初戦でサウジアラビアに逆転負けしていた。つまり、彼らは敗北を勝利に転換できたのだ。古くは1990年のイタリアW杯でも、初戦のカメルーンにまさかの敗北を喫した後、しぶとい戦いで巻き返してファイナリストになった。
アルゼンチンはただでは転ばない。負けた後、恐ろしく強くなる。不屈さが彼らの伝統だと言える。人一倍、負けを憎むことによって生み出される"勝利の方程式"だ。だが勝利であれ、敗北であれ、結果と向き合うのは簡単ではない。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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