サッカー日本代表が欧州でドイツにも圧勝した「ミドルプレス」「プレス回避」とは何か? (4ページ目)
【戦い方を変えない日本はアジアで大丈夫?】
――今回のメンバー選考に関してはいかがですか?
西部 もうこのままいくんだろうなという感じですね。変えないと思います。
清水 あとは4-1-4-1にするかどうかだけですよね。6月にやった時はそんなに守備に大きな破綻はなかったと思うので、こういうオプション持ちながらやるんじゃないかなと。特に古橋とかだったら、やはり4-1-4-1のほうががいいのかなと思いますね。
西部 これだけ日本がいいパフォーマンスをすると、相手は大体みんな引いちゃうと思うんです。そうすると、ミドルプレスをベースにした戦い方とは、また違うことを見せなきゃいけない。そうなると戦い方を変えない日本は意外とアジアの戦いで「おやっ?」ってことも起きるかもしれないですね。でも「そんなの関係ねえ」というのが基本的な日本のやり方なので(笑)。
清水 関係ねえと言っても、それで倒してしまえるほどやっぱり今は個の力がすごいなと。繰り返しになりますけど、そういう感じなんですよね。ドイツ戦もトルコ戦も。
西部 例えばアジアで相手が引きましたと。大体敵陣でワンサイドゲームになっていますという時に、人を捕まえて全部ハイプレスで行きますかと言ったら、やっぱりミドルゾーンに戻れるようなプレスしかしないと思いますね。一貫していると言えば一貫しているし、それが対アジアの最適解かっていうと「違うんじゃないの?」という気もしますけど。
清水 カタールW杯ではミドルゾーンで守備ブロックをつくるチームが大半だったみたいですよね。ハイプレスでいったチームはすごく少なかったという統計が出ています。
西部 やっぱりW杯本番ではハイプレスにリスクがあるからですね。今の日本のやり方が一番近いと思うのは、カタールW杯のモロッコです。ベスト4まで行きました。
清水 ただ、カタールW杯の時点で日本とモロッコを比べると、やはり先ほど言ったプレス回避にかなりの差があったと思うんです。モロッコは局地戦のミニゲームみたいなパス回しがすごくうまくて、相手のプレスを回避できるんですよね。
そのあたりが大きな差だと1年前は思ったんですけど、ドイツ戦を見てそこが日本もできていたのがすごくポジティブだなと感じました。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
清水英斗 (しみず・ひでと)
1979年岐阜県生まれ。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書に『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』(東邦出版)、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』(中央公論新社)、『サッカー好きほど知らない戦術の常識』(カンゼン)など。
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