「ピッチに立って戦いたい...とはまったく思わなかった」なぜ明神智和は憧れの舞台・日韓W杯の初戦でそう思ってしまったのか (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • picture alliance/AFLO

無料会員限定記事

 そのベルギー戦、日本は先制を許したものの、鈴木隆行のゴールで同点に追いつき、稲本潤一のゴールで逆転。2-1と相手を突き放した。

 その瞬間、稲本がベンチに向かって走ってきた。

「前日だったかな、露天風呂に入っていた時、点を決めたら『オレのところに来いよ』って、イナ(稲本)と話をしていたんです。でも、イナが点を取った時はそんなことも忘れて喜んでいましたね。

 イナとはシドニー五輪で、ボランチで一緒にプレー。彼の攻撃力を生かすためにも前でプレーしてもらって、イナも僕の特徴を理解してくれてすごくやりやすかった。そのイナが決めたので、ほんとうれしかったです」

 膨らんだ風船が爆発するかのようにスタジアムも歓喜に揺れた。だがワールドカップという舞台は、初出場の日本にドラマチックな展開を容易に許してはくれなかった。稲本の逆転ゴールから8分後、ベルギーに一瞬の隙を突かれ、フラット3の裏を取られて同点に追いつかれた。

「2-1でひっくり返した時、『W杯初勝利、イケるかな』って思ったんですが、そんなに甘くはなかったですね。でも正直、『初戦で負けなくてよかったなぁ』というのが実感でした。みんなも、表情が明るくて、ダメージはなかった。勝ち点1を取れたことで、次のロシア戦につながったので、みんなも、自分も、前向きな気持ちでしたね」

 試合の翌日、露天風呂ではDFの選手たちが集まって話をした。話題は、2点目の失点シーンだった。トルシエの戦術どおりラインを高く押し上げたが、相手に絶妙のタイミングで裏を取られて失点した。W杯で勝つために"フラット3"をそのまま実践していいのか、議論を重ねた。

「(DFラインの)背後を突かれてやられるのは、大会前の北欧遠征に行った時からあったんですが、そのままの状態でW杯の直前合宿に入った。それで、なかなか修正する機会がなくて、自分たちも不安に感じていたことでした。それが、一番大事な試合で出てしまって、次の日には守備陣を中心にして、修正に向けての話し合いをしました」

 トルシエからはとにかくラインを上げるように言われたが、世界は日本を分析し、その弱点を突いてくる。ここで何かしらの修正をしなければ、また同じようにやられてしまう可能性が高い。それまでフラット3を武器に高いラインをキープして戦ってきた経緯はあるが、どうにかしなければならない。話をしているうちに、基本的な原点に立ち返ることで、ひとつの結論に達した。

全文記事を読むには

こちらの記事は、無料会員限定記事です。記事全文を読むには、無料会員登録よりメンズマガジン会員にご登録ください。登録は無料です。

無料会員についての詳細はこちら

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る