谷口彰悟「身体にものすごく悪いことをしているのではないか」アスリートとしてカタールで抱いている罪悪感 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by ©本人提供

 ただし、どのチームにも前線には、強烈な個の力を持つ外国籍選手がいた。そういう意味では毎試合、人種やプレースタイルが異なるFWと対戦できたため、個人的には面白さもあった。

 しかも多くのチームで、前線にいる助っ人のストライカーがのびのびとプレーしていた。表現するなら、そのFWが「俺に(ボールを)出せ!」「俺に寄こせ!」と言っているところをチームとして狙っている感じ。その一発を常に警戒しなければいけないところは、Jリーグというよりも日本代表でプレーしている感覚に近いのかもしれない。

 リーグの特長も、日本とカタールでは異なるように、さまざまなところに違いを感じた。一例を挙げると、守備におけるチャレンジ&カバーの定義だ。

 日本で育ち、日本の指導を受けてきた自分は、コンビを組むセンターバックに対してカバーを意識するし、サイドバックへのサポートも意識する。しかしアル・ラーヤンでは、そうした意識や概念を持ってプレーしているチームメイトは決して多くない。

 たとえば、日本ではツーセンターバックがいて、相手FWがひとりだったとすれば、どちらかがインターセプトを狙えるような立ち位置を取り、もうひとりは相手FWの裏をケアするのがセオリーになる。

 一方、カタールでは、自分がインターセプトを狙おうと前に出たとしても、もうひとりのセンターバックは自分の立ち位置を変えず、その場にいることがほとんどだ。

 そのため、チームメイトには「僕がボールを奪いに前に出た時は、うしろをカバーしてほしい」と何度も伝えた。しかし、言った時は試みてくれようとしても、すぐに忘れて元のプレーに戻ってしまう。ほかにも相手ふたりを見ることができるようなポジショニングを取る感覚も希薄で、目の前の相手を止める、つぶすことを優先した守備だった。

 そうしたサッカー文化──むしろサッカー教育の違いと言ったほうがいいかもしれないが、自分が受けてきた指導、経験してきたこととの違いを、さまざまな場面で感じた。

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