日本人のインサイドキックはなぜ弱いのか? 東大卒のパーソナルコーチが力学的視点からお悩みを解決 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

【"軸足を抜く"は本当に正しい?】

 強いキックを蹴るために、日本の指導でよく耳にする言葉の"あるある"に「軸足を抜いて蹴る」というものがあります。確かにトップ選手のシュートシーンを見ると、蹴ったあとの軸足が外側に開いて、抜いているように見えることがあります。

 それを見た人たちが「軸足を抜けば強く蹴れるんじゃないか」と考えて、そういった言葉が指導の現場で広がったのかもしれません。

 ただ、軸足を抜くことを意識するだけでボールを強く蹴れるようになるのは稀です。軸足を抜くメリットはありますが、キックの技術習得の初期段階でそれを意識してやると、デメリットのほうが大きいです。

 軸足を抜くメリットがあるシチュエーションは、例えばカットインからのシュートの場面です。ゴールに対して横に移動しながらキックをすると、どうしても体と一緒に蹴り足の振りが外側へ抜けてしまいがちです。

 蹴り足の振りが外へ抜ける状態で枠内に収めようとすると、どうしてもカーブ系のキックになってしまいます。

 ストレート系のボールでより強いボールを蹴るには、蹴る瞬間に骨盤を蹴り足方向に移動させていく動きを利用します。これによって、蹴り足の軌道がまっすぐに向きやすくなり、回転の少ない速いボールを蹴り出すことができます。

横方向の動きをコントロールできている蹴り方(上)と、バランスを崩してしまう蹴り方(下)横方向の動きをコントロールできている蹴り方(上)と、バランスを崩してしまう蹴り方(下)この記事に関連する写真を見る この時、重要なのは体を横に動かす動きをしっかりとコントロールすることです。

 バランスを保って足を振りきれるようないい姿勢で蹴ることが何より重要で、これは軸足での減速技術を必要とする高等技術です。

 体の動きのコントロールがうまくできない状態で軸足を抜くことを意識していると、単に体勢を崩しやすく効率の悪い蹴り方になってしまいます。

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