「一瞬で夢が壊された感じ」セレッソ大阪の若き至宝が痛感した「10番の重み」と「世界の壁」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Hector Vivas - FIFA/FIFA via Getty Images

 自分のプレーをさせてもらえないもどかしさとともに、北野が口にしていたのは、エースナンバーを背負うことの重みと責任である。

「アジア(U-20アジアカップ)の時も(10番を)背負わせてもらって、でも、個人としてはなかなかいい大会とは言えない結果で終わったんで......。

 10番の仕事っていうのは、もちろん自分ではわかってますし、みなさんからの期待も背負ってプレーしないといけないんで、いろいろとこう、難しいところはあると思うんですけど......」

 そう言うと、「う~ん」と唸って言葉を探す北野。日本でテレビ観戦している家族からは、「もっとのびのびできるぞ」と伝えられたと明かす。

「周りから見ても、そう見られてるんで、やっぱりちょっと背負いすぎてるところはあるんかなって。『もっと気楽にしていいよ』とは言われました」

 そんな言葉で少しは肩の荷が下りたのか、北野は気持ちを切り替えるように、次戦へと視線を向けていた。

「いろんなものを背負ってプレーするってことは大事やと思うんですけど、やっぱり自分らしく楽しくサッカーができたら、それがいいプレーにつながると思ってるんで。覚悟を持ちながら、自分らしい"遊び心"のあるプレーを見せられればなってのは思ってます」

 その言葉どおり、続くコロンビア戦では「シュートを意識して増やすようにして、徐々に自分の形には持っていけてる」と、北野はうまくパスを引き出して前を向き、相手ゴールへと向かうシーンを増やした。

「1戦目より(ゴールに)近づいてはいると思います。でも、一発(のチャンス)で沈められる選手にならないといけないですし、数少ないチャンスで結果を残せる選手がやっぱり評価されると思うんで」

 結果的に、この試合もまた自身はノーゴール。しかも、チームも逆転負けに終わったことで、北野から弾んだ声が聞かれることはなかった。

 それでも、この日のプレーぶりから感じられたのは、いくらかでも"らしさ"を取り戻し始めていること。と同時に、重圧からの解放だった。

「他の人からどう思われてるかわからないし、(以前は)もっともっと楽しそうにやってたって言われたら、やっぱりそうなんでしょうし。でも、周りの声とかもたくさんあると思うんですけど、そういうのは特に気にすることなく、本当に自分ができるプレーをするだけだし、こういう舞台でサッカーをできるのってなかなかない。(自分は)こういう舞台を楽しめるようなメンタリティを持ってると思うんで、あとはしっかりやるだけかなと思います」

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