トルシエが感じた日本サッカーとベトナムの類似点 小野伸二や稲本潤一ら黄金世代ともU-20代表は「よく似ている」 (3ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by Kazuya Gondo/AFLO SPORT

――クラブチームの監督は経験のあるベテランに頼りがちで、選手起用が保守的になっているのでしょうか。

「そこは、日本も少し似ていると思う。特に日本人監督に見られる傾向で、外国人監督のほうが若手を積極的に起用している。

 ベトナムはさらに顕著で、監督が若手にチャンスを与えることはほとんどない。もちろん、若手を起用しているクラブもあるが、全体的に見ると、プレーするのはベテランであり、25~28歳の中堅選手たちだ。若い世代の成長にとっては、大きなマイナス要因だ」

――あなたは、ベトナム人のメンタリティを高く評価している印象はあります。

「彼らはオープンで、内気なところがない。キャラクターもしっかりしている。私との人間的な関係も、とてもスムーズだ。それは、この国の置かれた歴史的・地理的な状況が関係しているように思える。

 古くから戦争を経験し、アメリカやフランス、中国から侵略を受けた。常に守ることを余儀なくされた歴史がある。

 また、ベトナムは海外文化の影響も色濃く受けた。彼らには迅速に適応できる能力がある。同時に、自らのパーソナリティやアイデンティティを明確に打ち出す。だからこそ、興味深い。

 というのも、サッカーには強いキャラクターが必要だし、意志の強さを示すことも必要だからだ。ベトナムには、サッカーに打ち込めるあらゆる要素がそろっている」

――そのうえ、彼らは規律にもあふれている。

「高い規律を保っているのが、ベトナムという社会のイメージでもある。社会的にもよく組織され、規範も遵守する。年長者や師と仰ぐ人々への敬意を忘れない。

 だから、私もとても働きやすい。選手は私の言葉をよく聞き、指導者には常に敬意を示すし、確固とした意志を持っている。そうした環境がすべて整っているから、私も監督としてとても仕事がしやすい」

――スタッフに関して、あなた以外にフランス人スタッフはいますか。

「(フランスから)ふたり連れてきた。ひとりは4~5年前からPVFフットボールアカデミーで働いているフランス人のフィジカルコーチで、杭州緑城足球倶楽部(中国)でも一緒に仕事をした。

 彼は、西アフリカやモロッコ、UAEでも働いた経験がある。その後は、私とPVFで一緒だったし、U-19ベトナム代表でも私のスタッフだった。

 私が離れたあともベトナムに残り、女子代表で仕事をしていた。女子W杯本大会出場を果たしたチームだ。彼はまた、フィジカル強化に関して朴監督ともしばしば一緒に仕事をした。

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