日本代表に旗手怜央と古橋亨梧が選ばれない理由 畑を耕す時期にも森保一監督は優先順位を変えなかった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【W杯予選落ちの心配はない】

 そうしたリスクを犯しても続投するのであれば、代表監督は自分自身をそれなりに変える必要がある。今回の新星日本代表のメンバー発表は、そういう意味で注目された。森保監督は自分の過去をどこまで否定できるか。

 会見の席上で森保監督は「候補者は今回選んだ選手の何倍もいる」と述べた。選びたかったけれど、選べなかった選手が多くいるという悩ましい心境を吐露した。日本の選手はよく言えば粒ぞろい、悪く言えばどんぐりの背比べだと再三述べてきた筆者には、森保監督の気持ちがわからないではない。そうした横一線で並ぶ候補者の競争心をどう煽り、かき立てるか。

 W杯のアジア枠は4.5から8.5に増えるので、予選落ちの心配はない。2026年W杯に向け、慌てず騒がず一段一段、階段を確実に昇っていくことができるかとの視点に立つと、現在はまだ畑を耕す時期にあたる。

 その昔、ファルカンは新監督としてメンバー発表の会見に臨んだ際、その意外な顔ぶれを見て訝しがる日本の報道陣に対し、現在が4年周囲で回る1年目であることを説いた。ハビエル・アギーレも就任してから数試合、多くの新顔を登用した。ブラジル戦にベストメンバーを選ばなかったそのやり方に対し、メディアは批判したものだ。イビチャ・オシムが就任直後に選んだ選手も、思いがけない選手が多かった。これがサッカー的な考え方なのである。

 今回のメンバー発表のポイントは、森保監督がカタールW杯を戦った26人からどれほど離れられるかにあった。言い換えれば、どれほど知名度の低い選手を選ぶことができるか。だが、ウルグアイ戦の舞台は国立競技場だ。チケットもすでに完売している。そうした華やかな興行然とした舞台で行なわれる一戦に、人気の三笘や久保らを招集しないわけにはいかない。

 森保監督は空気を読むことに長けた日本人監督らしく、その結果、カタールW杯メンバーを26人中16人も選出した。入れ替えは初選出4人を含む10人に止まった。少ない。勇気に欠けたと言うべきだろう。

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