日本代表、価値あるベスト16敗退も、「もったいない試合」という印象が強くなってしまうワケ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 顕著なのが、センターバックの面々だ。

 ひと昔前までは、長身でヘディングが強く、外国人選手に当たり負けせず、それでいて足元の技術にも優れる。そんな選手をふたりそろえるだけでも至難の業だった。

 ところが、現在はキャプテンの吉田をはじめ、DF板倉滉、DF冨安健洋、DF伊藤洋輝という海外組に加え、Jリーグで力をつけたDF谷口彰悟と多士済々。森保一監督がワールドカップ本番に入り、従来の4バックから3バックへと主戦システムを移行することができたのも、彼らの存在があってこそだったに違いない。

 最近の日本代表にはスターがいなくなったと言われることがあるが、かつての中田英寿、中村俊輔、本田圭佑らのような際立つ看板選手が見当たらないのも、ちょっとやそっとでは際立たないくらいに、選手全体の平均値が上がったからだとも言える。

 とはいえ、選手個々の能力がアップしたからといって、持てる戦力を試合に応じてうまく組み合わせ、効果的に配置することができなければ、チームの力を最大化することはできない。

 そして今回の日本代表を見ていると、残念ながら、それが必ずしもうまくいっていたようには見えない。そのことは、図らずも決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦で、証明されてしまったのではないだろうか。

 グループリーグだけを見れば、確かに森保一監督の打つ手は次々に当たった印象がある。ドイツ戦では4バックでスタートしながら、1点ビハインドの後半開始から3バックへ移行。その後、攻撃的な選手を投入するや、その選手が次々に活躍した。

 だが、日本は続くコスタリカ戦で、前半途中にして4バックから3バックへと変更すると、以降はすべての試合の、すべての時間で3バックを採用。システムの固定化と同時に選手交代も、攻撃的な選手については対戦相手や試合状況に関わらずパターン化され、FW浅野拓磨とMF三笘薫にプラスして、MF南野拓実とMF堂安律、あるいはそのどちらかが送り出された。

 結局、最後に敗れたクロアチア戦でも、前半に1点を先制しながら後半55分に追いつかれて以降は、いつもの交代がいつもどおりに行なわれただけ。試合がこう着状態に陥り、なかなか敵陣に進入することが難しい展開になっても、次に打つ手はもう用意されてはいなかった。

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