久保建英「個人的にはすごく悔しい試合になった」。スペイン戦をどう考え、何を語ったのか (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

 その分、再び前半でベンチに下がることには、悔しさが募った。

「守備的にいくのはチーム戦術なので仕方ないですが、前から行けばもっといいプレーができたし、ボールをとられる気もしなかった。もっと僕のところにボールがくるのかなと思っていました。個人的には、すごく悔しい試合になりました」

 そうした感情は、表情にも出ていたのだろう。他選手から「チームを信じろ」と声をかけられたという。

 そしてそのとおり、日本はドイツ戦に続いてスペイン戦でも逆転勝ち。決勝トーナメント進出を決めた。久保は、「次のチャンスを与えられたことを、チームメイトに感謝して、次、準備して、前半で結果を出すしかないと思っています」と、神妙な表情で語った。

 ただ、コンディションが上がってきたせいか、自身の態度には余裕が出てきている。

 ドイツ戦の前には、長友が髪の毛を赤く染めたことを聞かれると、「サッカーに集中したいので、サッカーのことを聞いてほしいと思います」と、ややピリピリした雰囲気を漂わせていたが、スペイン戦後には、ベンチで肩を組むことを提案した選手について聞かれ、「(長友)ひとりしかいないでしょう」と言って、周囲を笑いに誘った。加えて、「ああいう熱い選手がチームの雰囲気をよくしてくれる」と、ベテラン選手の行動に感謝の気持ちを示した。

 ここまで、ドイツ戦、スペイン戦と貴重な同点ゴールを挙げた堂安がラッキーボーイ的な役割を果たし、ヒーローになってきた。三笘薫も攻撃にアクセントを加え、高い評価を得ている。

 だが、久保が言うとおり「W杯は毎回、ヒーローが替わる」。スペイン戦翌日は体調不良で練習を休んだものの、メンタル的には次への準備は整っている。勝負のクロアチア戦。少しでも出番が回ってくれば、今度は久保がヒーローになってもおかしくない。

【筆者プロフィール】佐藤 俊(さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など多数。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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