ドイツ戦で森保監督がついに見せた"イケイケ采配"。3段階の積極策で日本代表はトップギアになった (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

混乱のまま前半を終える

 一方、連続して同じような攻撃を許したドイツもここから本領を発揮。日本の狙いを確認すると、すかさず最終ラインを左肩上がりにスライドさせて、布陣を3-4-2-1に可変。ラウムの背後のケアをすると同時に、日本の守備を混乱させることに成功する。

 守備時は4-4-2でブロックを形成する日本は、3バックの相手に対するプレスが課題として残されたままであることは、9月のエクアドル戦や直近のカナダ戦でも露呈されたばかり。ドイツもそれを分析したうえで、敢えて日本の布陣とのミスマッチを作って優位性を確保する狙いがあったのだろう。加えて、トップ下のトーマス・ミュラーの絶妙なポジショニングが、日本の守備をさらに混乱に陥れた。

 本来自分がマークすべき相手の右SBニクラス・ズーレが3バックの右に移動したことで、久保建英がスタートポジションよりも内側に引っ張られるようになると、久保が空けたスペースにミュラーが下りて数的優位を作った。

 すると、右ウイングのセルジュ・ニャブリもミュラーの動きに伴って内側にローテーションするため、マーク役の長友佑都もニャブリに引っ張られ、久保はズーレとミュラーの間で右往左往することに。状況によっては、左ボランチの田中碧が久保の背後のスペースをカバーするために左サイドに出ていかなければならないシーンも増えていった。

 前半9分、10分、19分、26分、29分、30分と、ミュラーの起点を作る動きに翻弄された日本が自陣でボールを追うのが精一杯という状況が続くと、ついに31分、右サイドで起点を作ったミュラーから中央のヨシュア・キミッヒ、左のラウムへと展開され、ボックス内フリーでパスを受けたラウムにGK権田修一が飛び込んでPKを与えることとなった。

 日本にとって幸運だったのは、追加点を与えなかったことだった。いずれにせよ、この戦況が続いた前半、ドイツはボール支配率で72%(中立10%)、シュート14本(枠内4本)と日本を圧倒。同18%、1本(枠内0本)の日本は、混乱状態のまま前半を終えている。

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