ドイツ戦で森保監督がついに見せた"イケイケ采配"。3段階の積極策で日本代表はトップギアになった (3ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

3段階のベンチワーク

 そして、日本にとって最悪とも言える展開となったこの試合の潮目、つまりジャイアントキリングの引き金となったのは、森保一監督の過去に見たことのないレベルの積極的ベンチワークで、そこには3段階のフェーズがあった。

 1つ目のフェーズは、後半開始から久保に代えて冨安健洋を起用し、布陣を3-4-2-1に変更したこと。左ウイングバック(WB)に長友、右に酒井宏樹を配置する5バックを採用することによって、まずはミスマッチによる守備の混乱を修正した。

 ただし、これですべてが解決したわけではなかった。後半の立ち上がり47分に左サイドでズーレのパスを受けたミュラーがボールを運んでから右に流れたニャブリに展開し、ニャブリのシュートを浴びたほか、6分にもムシアラの個人技で決定機を許すなど、布陣変更後も何度かピンチを招いている。

 それでも、マークの混乱が解消されたことで、敵陣に前進できるようになり、50分に見られたような、板倉滉、酒井、遠藤航の3人でムシアラを囲んでボールを回収するといったシーンも作れるようになっていた。

 続く第2フェーズは57分。何とかボールを奪うところまではできるようになったことで、長友に代えて三笘薫を左WBに、前田に代えて浅野拓磨を1トップに起用し、いよいよ攻撃重視の戦い方へとギアチェンジ。これによって試合はオープンな展開になり、リズムを失い始めたドイツベンチは、ミュラーに代えてヨナス・ホフマン、ギュンドアンに代えてレオン・ゴレツカをピッチに送り込み、守備の安定を図っている。

 しかし、71分に猛攻を浴びた日本は、そのピンチをGK権田の好セーブ連発によってしのいだ直後、さらに攻撃のギアを上げるべく第3フェーズに突入する。

 71分に田中に代えて堂安律を前線に起用し、鎌田大地がボランチに移動。続く75分には負傷の酒井に代わって南野拓実を投入して伊東が右WBにポジションを移すと、フィールドプレーヤー10人を6人のアタッカーで構成する超攻撃的3-4-3で賭けに出た。

 森保監督の"イケイケ"采配によってトップギアに入った日本は、75分に堂安が同点弾を叩き込むと、79分のドイツの2枚替えの影響を受けることなく、83分のFKで板倉がドイツの守備ラインの隙を突くロングパスを浅野に供給。背後をとった浅野が抜群のファーストタッチのあと、角度のないところから奇跡的とも言えるシュートをニア上に突き刺し、ついに逆転。ここに、世紀のジャイアントキリングが成立した。

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